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銭湯と垢すりそして、亀の子たわし

 垢。夏になると、少し足が痒いとかきむしる。時には、汗と混じって、垢の塊が寄れて出てくる。

これは、もうシャワー時と思って、シャワーを浴びる。

 ところで、垢で思い出すことは、「銭湯」なのだ。

学生時代、下宿と言えども、お風呂は、「銭湯へ行ってください」だったので、先輩から聞いた最寄りの銭湯二箇所に目星をつけておく。

 一つは、脱衣所に、コインランドリー式の洗濯機(乾燥機なし)がひとつ置いてあり、洗濯しては帰るのであった。

 昔だから、風景は、テレビドラマ「時間ですよ」のあの風景。牛乳もない。番台は、若い息子が座っていることも。

 銭湯体験は、人生初。そこで、お風呂の礼儀というものを知る。

 垢がついているうちは、湯船に入らず、洗面器で、掛け流し。
 湯船にタオル、手拭いは入れない、頭の上にのせるか、髪を巻くとか。

 それから、洗い場で、座椅子に座って、垢を擦り落として、最後は、石鹸をつけて、泡を立てて、体を洗い流す。

 
 垢擦りは、他の常連客をみていると、これでもかと、物凄い垢を擦り擦り、擦りとっている。ただ、唖然と、眺めてしまう。

 さぞかし、気持ちいいものだろうなあと。私は、慣れていないので、タオルに石鹸をつけて、泡だてて、体に万面につけて、すりすりして、それから、洗面器にお湯と水で調和させて、ダバンと、体を流すだけ。それから、湯船に浸かる。上がる前に、使用したタオルを硬く絞って、水気をとるように体を拭う。

もう一つの銭湯は、一つ目が休業の時に、予備として行った。

冬場は、同じ下宿人4名女子が、洗髪すると、山姥か、雪女のように濡れた髪が凍りついて、髪の毛を逆立てて帰ってきたものだ。


 夫を失くしてから、「そうだ、夫の手土産の京都の目の細かい亀の子たわしとやらで、全身を擦ってみたら、どんなものだろう?」と。

確か、あの亀の子たわしは、体を摩擦すると良いとか言って、もらってきたものだ。

 で、ある日、お風呂で、その亀の子たわしを使い、全身を擦ると、「おっ、気持ちいい・・。ちと、痛いが・・」

そして、垢は、あの銭湯の常連客のように、面白いように浮き上がってくる。石鹸を泡立て体についた垢を洗い流す。

が、それを数回行った後、腹部の柔らかいところの水疱瘡の痕に、たわしの毛が刺さったのか、それから、帯状疱疹になって、京都の亀の子たわしは、封印した。

 まあ、それが、偏に坊主頭にする由縁にもなった。


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