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儲けないと申し訳ない

「メーカー化」のもう一つの壁

モノづくり企業の「メーカー化」に立ち塞がるもう一つの壁は、原価率です。

例えば、私が工場用の金属製ラックを自社商品として作るとしましょう。まず、複数の工場に見積もりを依頼し、他にラベルや梱包材などの仕入れ値を計算して、一個当たりの原価を算出しますよね。その時点で、モノタロウなどで売られている中国製の類似商品に比べると、10倍くらいの金額になってしまいます。それに何とかして付加価値を、と思っても、その時点で価格10倍では話になりません。他社の売値に対して、こちらの原価が10倍です

例え話のように書いていますが、これ実話です。小ロットだとそれ以上の価格差になり、いきなり大ロットだとリスクが高すぎる。結果、アリババで輸入した方が断然ビジネスになります。というよりも、そうしないとビジネスになりません。

利益を取ると申し訳ない

あるいは、農家の方が作った六次化商品では、粗利がなぜか2~3割で設定しているものが多い印象です。原価率7~8割では、通販はもちろん、店舗販売でも厳しいでしょう。作った場所から動かさずに、工場直販とかで買いに来てもらうしか、選択肢がなくなります。

それぞれおしゃれにデザインして、中身もよさそうな商品なので、真っ先に原価率を聞くのですが、「原価率?どういう意味?」と聞かれることもしばしば。いや、その人は生産担当で、販売担当は別にいるのかもしれない。そう思って聞くと「全部ワシだよ」と。

お父さん、意気込みはわかる。作った商品もよさそうだし、いろいろ試行錯誤したんだろうなと思う。想いも伝わるし、僕も何とか流通させたい。でも、原価率7割じゃ何もできんよ。。。

「いや、ワシは儲けなくてもいい。あんなり利益を取ると申し訳ない」

ガ~~~ン。。。またか。またこの「利益を取ると申し訳ないマインド」。生産者の人に多いんですよ。特に一次産業の。その人に、一般的な通販の原価率を説明すると、違う星の生物を見るような目で見てくる。そして、最後にフッと笑う。ニヒルに。それもよくあるパターン。

世代によるとは思いますが、日本人に広く浸透しているこのマインド、何なんでしょうね。江戸時代から?いや、江戸時代の商業は学校で習ったよりも活発だったはず。明治?戦後?どうなんだろう。そういえば、相続税などの「濡れ手に粟は許さん」的な懲罰税も、儲けるのは悪というマインドから来ているのかもしれない。

いずれにしても、どんな商品を作っても、特に通販の場合、粗利は7割くらい、できればそれ以上はしっかり確保してください。通販は、想像以上に後方費用がかかるし、マーケティングにコストを回せないと尻つぼみです。仮に5割だと、打ち手が少なくなってきます。3割以下だと、自社の店頭で売るしかありません。

儲けないと申し訳ない

と、途中から農家さん本人に話してるような文調になりましたが、モノづくり企業(農家さん等も含む)が自社商品を作る場合、このようなケースが多発するのです。

何より、しっかり利益を取らないと、生産にかかわった人に申し訳ない。そう思考を切り替えてください。思いを込めた商品であればなおさらです。各工程で、様々な人がかかわったはずです。それらの人に報いるためには、利益を出すしかありません。売って儲けないと、誰もハッピーにならないのです


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