Post-it! 気になる一曲 —ショパン・コンクール2021 1次予選より 反田恭平さんと沢田蒼梧さんの演奏を聴いて—

おっとっと、気がついたら1次予選が終わってしまった、ショパン・コンクール。聴いていなかったので、さっそくチェック。

まずは予備予選でいいなあと思っていた反田恭平さんの演奏。

1曲目『ノクターン 第17番 ロ長調 Op.62-1』と4曲目『スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31』が素晴らしい。静から始まり動に終わるという構成か。

『ノクターン 第17番 ロ長調 Op.62-1』はショパン晩年の夜想曲だそうだ。ひっそりと野に咲く花のような美しい曲。しかし、いきなりシブい選曲だなと思った。
予備予選の時も思ったけれど、ピアニッシモの美しさ。27才とは思えない、人生の酸いも甘いも知り尽くしたような演奏に聴こえる。若くしてこの表現力。反田恭平とはどんな人物なのだろう。

『スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31』。やはりピアニッシモの美しさがこの曲の持つ「狂気」に説得力を与えているような気がする。終盤に向かって狂気は増していく。


一方で沢田蒼梧さんの演奏。

個人的には3曲目『エチュード 嬰ト短調 Op.25-6』が一番印象に残った。
なんと言うか、ピアノは「ド」を弾けばもちろん「ド」の音が出るのだけれど、実はその「ド」に10段階くらい誤差があるんじゃないか。しかし彼の演奏は「一番正確な真ん中のド」をピタッと弾いているような感覚なのだ。聴いていて非常に快感をおぼえた。正確というよりむしろ「精緻な」と言ったほうがぴったりくるか。かといって、それをひけらかすような安っぽさがない。バランス感覚があり、インテリジェンス溢れる演奏なのだ。なんとなく彼の演奏するバッハを聴いてみたいと思った。



なんだか評論家気取りで書き飛ばしてしまったが、シロウトだからお許しを。テイストの全く違う二人だが、私はどちらの演奏も素晴らしいと思った。2次予選を楽しみに待ちたい。