Post-it! 気になる一曲 『協奏曲第2番 ト短調 RV315 「夏」第3楽章Presto ー「四季」より』

アントニオ・ヴィヴァルディ/作曲
ファビオ・ビオンディ & エウローパ・ガランテ
1991年


ヴィヴァルディの『四季』。これほど日本人に馴染みのある曲もないだろう。私の場合、小学校の朝の「読書の時間」に必ずこの曲がかかっていた(『秋』だったと思う)。あまりに有名な曲だが、改めて聴くと、全曲が本当に奇跡的に美しくて驚いてしまう。
選ぶのが難しいが『春』の第2楽章、『夏』の第3楽章、『冬』の第1楽章(残念ながらビオンディの演奏はあまり好きにはなれなかった)、同じく『冬』の第2楽章(Largoのメロディの美しさ!)あたりが特に好きだ。

ビオンディによる『四季』で、私がいいと思うのは、今は冬真っ只中だが『夏』の第3楽章だ。
Prestoとあるが、最早これはPrestissimo、疾風の如く一気に駆け抜けていく。しかしこの速度が自然に感じてしまう不思議。私は常々『四季』に「ロック」を感じているのだが、まさにロックミュージック的カタルシスを、この一曲は感じさせてくれる。
楽譜には「ここはアドリブで演奏する」等とあるらしいので、奏者に任せた自由な『四季』があっていいのだろう。ビオンディの『四季』は全体的に重厚さはないが、むしろその軽みや自在なテンポに生命の息吹を感じる。これはイタリア的な感性だろうか。本来のヴィヴァルディは、こんな感じだったのではとまで思えてくる。

ヴィヴァルディは一説によると「赤毛の司祭」と呼ばれ、なかなか激しい人生を送ったという。たしかに『四季』には激情というか、感情のほとばしりが感じられる。
そして、ヴィヴァルディ自身がヴァイオリンのヴィルトゥオーソであり『四季』もヴァイオリンの名手だったとされるモルツィン伯爵ヴェンツェスラウに献呈されたことを考えると、ヴィヴァルディにとってヴァイオリンとは、自身の感情をくっきりと描出してくれる特別な楽器だったと言えるのではないか。

さて、このnoteを書いていたら、Alexandra Conunovaというバイオリニストの、これまた素晴らしい『四季』があることを発見してしまった。馴染みの曲ほど、奏者による演奏の違いを楽しんでみたい。さらに言うと自分のイメージを覆してくれる演奏を聴いてみたいとも思う。