Post-it! 気になる一曲 『Ramona』

アルバム『HoSoNoVa』より
細野晴臣
2011年


ライナーノーツによれば、原曲は1928年の米映画『Ramona』の主題歌とのこと。これまた多数のカヴァーが存在する名曲だ。細野晴臣は1960年に大ヒットした The Blue Diamonds によるロックバージョンをラジオで聴いて、メロディやコードを覚えていたという。しかし「ギターでつま弾いてみると、ロックではなく古典的な曲想に近く、その感じのままに録音した」というのが制作経緯らしい。日本語の訳詞も細野氏自身によるものだ。

疲れた夜に耳を傾けると、その温もりにほっとして涙がこぼれ落ちてしまう、そんな曲だ。音楽とは、こんな素朴なものだったのだということを思い出した。シンプルで愛らしいメロディが、ただ胸を打つ。

細野氏はその独特の低音ヴォイスで、音楽についてさまざま語っている。他人の曲をカヴァーすることやライブの楽しさ、消えゆく東京の風景と少年の頃聴いた音楽…。年齢を重ね、変化してきた音楽観が興味深い。
氏の近年の多数のカヴァー曲制作 —— そこには、消えゆくものを残そうという一種本能のようなものが働いており、さらに「自分自身にあまり興味がない」とインタヴューで語っていたように、自分ではない他人の作った空間にダイヴすることの楽しさがあるのだろう。
1930年代から1950年代の音楽とは、いったいどんなものだろう。私自身は1970年代以降の洋楽ロック・ポップスや西洋クラシック音楽ばかり聴いてきた。まだまだ音楽の海は広い、と細野氏に言われているようだ。