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フランス旅行記 プロバンス篇 2

ルールマラン

エクサンプロバンスを拠点としてプロバンスを巡る小旅行を開始。まずはルールマラン。ヴォクリューズ県。エクスから北北西に60キロに位置する、人口1,200人の村。リュベロン山地の麓にある15世紀ルネッサンス期のルールマラン城を中心に素朴で美しい家々が並ぶ。まさにプロバンスを代表する村です。

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村を散策してみると、路地の美しさに気づきます。人々は村とともに生活し、豊かな自然の中で時間がながれる。人を惹きつけてやまない村。魅力的というのはこういうところを言うのでしょう。おいしいワインとプロバンス料理。別荘も多い。一晩や二晩ではもったいない、少なくともひと夏はすごしたいところ。

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ショーウインドウの中にネコもいます。

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ジャスミンの花が美しい

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アルベルト・カミュが眠る村

フランスの作家であり、劇作家であり、そして思想家でもあるアルベルト・カミュはこの村を愛し居を構えました。1960年パリでの交通事故により46歳の若さでこの世を去ったカミュ。遺言通り、遺体はルールマランに埋葬され、現在でもご家族はルールマランでの生活を続けています。

カミュは当時フランス領であった北アルジェリアに生まれました。学生のころはリヨンでナチズムに対するレジスタンス運動にかかわった人。「異邦人」「カリギュラ」「シーシュポスの神話」「反抗的人間」等々の著作があります。「ペスト」はここルールマランにて著作されたとのこと。

フランスでは伝統として書き言葉と話し言葉の間にはっきりとした線引きがありますが、カミュは「異邦人」にてその線を飛び越え、話すように書くという新しいスタイルを確立しました。文法としては複雑な時制を減らし、単純過去を使って書くスタイルはセンセーショナルなものであったでしょう。書き手と読み手が重なりあう。彼は小説と同時に戯曲も多く手掛けています。

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異邦人

今日、ママンが死んだ

Aujourd'hui, maman est morte.

この有名な一行から始まる「異邦人」。主人公の青年ムルソーは偶然他人事のいざこざに巻き込まれ命を狙われるようになります。とうとう刃物で切り付けられ、逃げるために相手を拳銃で撃って死なせてしまう。

法廷で検事は陪審員に対しこのように訴えかけました。「ムルソーは長い間離れて住んでいた母親の死にも無関心であった。葬儀に参加したが遺体には面会しなかった。葬儀の翌日、恋人と映画にいき一晩過ごした。拘留された後もその態度は冷淡そのものであり、特に反省する気配も感じられない。」

ムルソーの日常は、ちぐはぐでかみあわない証言となって法廷に響きわたります。同じ写真の切り抜きからまったく別の物語を作るように状況は彼に不利となっていき、これは用意周到に準備された計画的で残虐な事件であるとみなされるようになる。

そして検事はムルソーにこう尋問しました。「君が撃った一発目は十分に相手に痛手を負わせた。それなのになぜ続けて4発も撃ったのか」

ムルソーは答えます。

「太陽がまぶしすぎたから」

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シーシュポスの神話

むかしむかしのギリシャ。エピュラ国という国があり初代の王はシーシュポスと言いました。彼は暴君として名高く、何度もゼウス神をおこらせて命を落としそうになりますが、悪運強く生き延びてきた人です。臨終の時を迎えたとき、この期におよんでもまだ彼は妻のメロペが自分に従順であるかどうかを試そうとし、「俺が死んだら墓に埋葬せず、公園に野ざらしにすること」といいつけて死にます。メロペはシーシュポスの遺言通り、彼の遺体を公園に置き野ざらしにしました。

冥界へ行ったシーシュポスは、自分の肉体が朽ち果てていく様子をみて腹をたて、冥界の女王ぺルセポネをたずねてこういいます。「わが妻はわたしをないがしろにして、遺体を埋葬もせず道端に捨てました。こんな残虐なことがあるでしょうか。なんとしても妻に仕返しをしたいので、生き返らせてください。」

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ぺルセポネは期限付きで冥界から出ることを許しました。しかしいっこうに冥界へ帰る様子はありません。この一部始終をゼウス神につかえるエルメスが見ていたのです。話を聞いたゼウス神はとうとうシーシュポスを捕まえ、神を欺いた罪で罰をくだしました。

その罰とは。長く急な丘の斜面を自分の身長の5倍も6倍もあるほどの大きな岩をころがし、頂点まで運ぶということでした。一日かけて岩を頂点まで運ぶと、岩はごろごろ転がりおちてしまいます。また頂点まで運んでも岩は下まで転げ落ちる。最初から何度も何度も同じことをやる。シーシュポスは昨日も今日も明日もまた、永遠に岩を運び続けています。

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リュベロン地方

ルールマランのある地域はプロバンスのなかでもリュベロン山麓であることから一般にリュベロン地方と呼ばれます。泳ぐことができるのではないかと思えるほどの一面のラベンダー畑。アーモンドの林。ワイン畑。すばらしい自然のなかに古代ローマの橋がある。蜜蝋色の壁。なだらかな傾斜が美しい。現在も橋として人々が行き来しています。

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ワイン畑

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木陰がきもちいい。

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ルールマランへのアクセスはエクスから車で向かうのが一番。バスは朝晩に2本くらい走っている。電車はエクスからアヴィニョンにいくまで走っていてアヴィニョンからは車。エクスからは現地ツアーも数多くでているので検索してみるとよい。レストラン、宿泊施設がとても充実していて、選択肢も多い。やはり少なくとも2週間くらい滞在したい村。

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