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キオクノート #20 羽山農園と株式会社ぺパンの話

2014年からスタートした羽山農園。

最初に書いておくと。農地も作付け品種も少しずつ増やして、飲食店のみんなとのコラボや色んなマーケットにも出店。友人や元お客様などたくさんのファンの方に購入していただいていましたが結果2017年で縮小、現在は休業中という形になっています。

この2014年の春からの時期は技術的にも経営的にも試行錯誤の連続で、近所のベテランさん達に農機を借りたりコツを聞いたり、地域の気候の事や作付け時期の調整、地元自治体や国の補助金なども検討したり、全て一筋縄ではいかない案件だらけ。
ただ少し先が見えてきた時小規模農業の限界も知ったのでした。規模と売上はやはり単純に比例するのでみんなと同じでは話にならない。営業不足を自己認識しているので売上は中々上がらず、野菜をそのまま売ってもイカンなと。辿り着いたのがこの頃盛んに言われていた6次産業化というやつです。田舎で知名度がないので役所も真剣に取り合ってくれず、中々前に進まないのが非常にストレス。

そして同時に大阪に残している飲食部門土佐堀オリーブも成績は横ばい、ヒト不足もありハヤマが大阪に戻って店に出勤することも増え、経営にもがいている時期でもありました。

ここで決めたのが法人化です。会社というものの信用度はやはり地方に行けば第一印象が違いますし、大阪で仕事する上でも将来スムーズに話が進むと考えました。1人社長の極小会社なら資本金も極小で良く、その他経費入れて数十万円で立ち上げ可能です。経営的にもさらなる設備投資などで融資がおりやすくなるだろうとの考えもありました。

付けた社名は「株式会社ぺパン」。2016年2月22日の設立です。

当時の理念はこう記していました。

ぺパンは種。食を通して日々の暮らしの種を届けたい。

ヴィジョン
「食を通して未来を考える」
私たち株式会社ぺパンは、種から始まるすべての営みに感謝して、食を通して生活に寄り添う、持続可能な暮らしを考え、提案し実践出来る企業でありたいと思います。

ミッション
「想いを分かち合う」
私たちのやるべき事は出会う人々と共に価値や想いを分かち合い、やりたい事の共感を得て、喜んでもらう事です。

ツール
「料理 日本食材 日本ワイン 日本茶 農業」

料理のための料理、サービスのためのサービスではなく、ミッションを達成するためのツール。ミッションから逆算する。押しつけるのではなく分かち合う。

・飲食店経営
・農園経営
・野菜販売
・食品販売
・酒類販売
・野菜加工品製造
・食肉加工品製造
・果実酒製造
・飲食店コンサルタント
・フードコンサルタント
・フードケータリング
・イベント企画 運営

なんだかむず痒く青くさいコトも書いてますが、会社として世の中の役に立ちたいと本気で思ってのこと。お茶やワインも作ってみたい。野菜はもちろんのこと、でもそれを消費するところまで繋げないと。同じ思いの仲間に集まって欲しいな。まぁ要するにウチで1次から6次まで全部出来たらいいなって真剣に考えていたのでした。

概ね上記のような活動をボチボチ進めてはいたのですが、一番深刻な問題が発生します。ヒト不足です。ヒトが先かカネが先かではないですがとにかく全然うまく回らない。ヒトがやめると次がこない。ヒト不足だから営業をセーブしなくちゃならない。結局次の年、冒頭にあるように農園に自分がいられなくなりました、土佐堀オリーブを手伝うためです。農園での師匠ハヤマ祖母に畑は任せてまた大阪での生活に戻ります。当時の店長は1人でもやると言ってくれていたのですが、1人のしんどさはハヤマが良く知っていたのでそんな選択肢はなし。とにかく売上を盛り返さねばと再び厨房に立つことに。

それでも成績右肩下がりは止まらず、ぼくは全く違う視点変更がいると考えます。家族にも助けてくれてた店長にもろくに相談もせず僕自身のチカラで復活させると一人で意気込んで出した答えは羽山料理店の復活です。少しの店舗改装と設備投資で新たに融資も受けるコトが出来、キャッシュフローも改善されるはずです。
こうして2017年3月で土佐堀オリーブは閉店し、同じ場所で羽山料理店が復活することになりました。当時、わがまま社長とか料理しかできない頑固社長とか店長から土佐堀オリーブを奪った横暴な社長と色んなところから噂を聞きましたが全部間違いでもないし、続けてナンボという信念で動いてました。復活オープンに向けて書いた挨拶にあるその新しいコンセプトは会社理念にも沿って次のように。

「Dishes」
フランス伝統料理やほっとするビストロ料理に加え、兵庫県佐用町にある羽山農園からの季節の野菜や地元特産物、日本の各食材の生産者の方々とその土地、農園の風景や空気を通して感じたことを共有出来るようなひと皿。

「Wines」
生産者や作り手と直接会って話し、味わって選んだ食事と食材に寄り添う日本のワイン。土地や水や風土を素直に切り取った世界のナチュラルメイクワイン。いつの時代も変わらず愛され続けるトラディショナルなワイン。

French Bistro Dishes with Japanese influence.
Natural & Japanese Wines.
Farm to Table.

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<ご報告>
この4月より「羽山料理店」を再開させていただきました。
また厨房に立ち料理が出来る環境に身を置けることに感謝しております。
アラカルトスタイルは以前とさほど変わりませんが、フランス伝統料理に加え、日本の各食材の生産者の方々とその土地、農園の風景や空気を通して感じたことをひと皿で共有できるような料理ができればと思っています。
5月が過ぎれば創業14年目に突入いたしますが、これからも変わらず羽山料理店をよろしくお願いいたします。

2017 春
羽山料理店 羽山智基

コンセプトは立派なのですが、羽山料理店が復活したのに以前と同じを期待していた人には響かず、進化を期待した人には物足りず中々客足も伸びません。料理教室の講師をさせてもらったり、変わらず出店させていただけたマーケットなど外に向けて発信してみても手応えはすぐに感じられません。オマケに農園生活のせいか頑固さに磨きがかかり、許せないものは許せないとお客さんも選んでしまう始末。背伸びした価格設定にしてみたり、変わった食材ばかりメニューに入れたり。売上が上がらないので長く働いてくれたスタッフにも給料をまともに出せず、そのまま退職してもらいまた1人に。結局出来ない言い訳を繰り返してる未来の見えない店になってしまったのでした。そして自分の生活費もままならなくなった頃やっと気づくのです、全て裏目、全て遅かったという事に。
次回はおそらく最終回。時期にして2019年を迎えます。

読んでいただいてありがとうございます。マガジンもちらっと見ていただけるとうれしいです。