アマゾンのホールフーズ買収の裏側を分析
小売業にとってかなり衝撃的なニュース。
アマゾン、ホールフーズを137億ドルで買収-食品販売に本格参入 (1)
Amazonが本格的に小売業の構造を破壊しにきています。
ホールフーズ買収の背景にあるものを簡単に整理・分析してみました。
食品スーパーのマーケット推移
まず前提として、食品スーパーの市場は伸び続けています。
青線が食料品スーパーの販売額
Amazonが食品業界、実店舗(スーパー)の領域に入ってくるのは当然の流れですね。
通販だけではなく、実店舗運営も視野に入れ、食品業界への参入はかなりのスピードで強化しているAmazon。
なぜAmazonはホールフーズを買収したのか?
以前に、食品業界、実店舗領域にアマゾンが参入する上での課題や今後のアプローチ方法をまとめた記事がありました。
【食品業界に挑むアマゾン】実店舗展開に向けた第3のアプローチ
記事の内容からAmazonが抱える2つの課題を整理
Amazonのホールフーズ買収は、ノウハウを買い、Amazonの下記課題克服が狙いとしてあるのではないかと考えています。
ノウハウ①廃棄率の予測精度
食品業界に参入してみての反省は、「廃棄率」の損失予測甘かったとのこと。
ホールフーズは食の安心・安全にこだわった生鮮品を長年取り扱ってきていることから、「廃棄率」コントロールのノウハウは優れているのかもしれません。
廃棄という視点では、セカンドハーベストという食品ロス(フードロス)を引き取り、人々へ届ける活動を行う団体とAmazonがタッグを組んでも面白いのではと思います。
Amazonは、低所得者へのアプローチも強化しているのでシナジーがききやすそう。
ノウハウ②実店舗の運営(店舗そのもののリソース)
Amazon Goは実証実験として始まっていますが、今後の拡大は狙っているでしょう。
無人店舗の自動精算という仕組みが売りではありますが、「接客サービス」ノウハウはシステムをつくる上でも必要になってくるのではないかと考えています。
そういう意味ではホールフーズが長年顧客と向き合ってきた生なノウハウはAmazonにとって貴重なのではないかと思います。
日本の食品小売業が学べることは何か?
日本の小売業に必要な戦略は「ライフスタイル全方位と顧客コミュニティ構築」ではないかと自分は考えています。
参考になりそうなのが、東海地方を拠点にスーパーマーケット・ホームセンター・ドラッグストア・スポーツクラブなどを店舗展開するバローグループ。
地方スーパーを買収、事業を多角化、PB商品開発強化をしっかりと進めて業績を伸ばしていますね。
地方のニーズに合わせてライフスタイルに関わる事業を多角的に展開しています。
エリアセグメント強化→細かい地域ニーズを徹底的に拾う→コミュニティ構築という流れは地域スーパーにとっては生き残る道なのではないかと考えています。
詳細な顧客データからPB商品の開発につなげる発想を組織文化に根付かせる必要がありそうです。
組織統合と顧客統合の視点を
事業の多角化を進めていく上では、事業を縦割りにしないこと、顧客接点を分割しないことが鍵になってきます。
顧客データを事業横串で共有し、統合的に顧客接点をデザインすることが大切です。
そのためには、全社横串でみるマーケティング部門の位置づけは超重要になってくるはずです。
PLの設計、カスタマージャーニーの描き方、データ共有のあり方などから考えて組織デザインをしていく必要がありそうですね。
その他:ウォールマートの動きに注目
Amazonのホールフーズ買収ニュースを受けて、ウォールマート株は下がっています。
ウォールマートは実店舗を持ちながら、ネット通販・宅配領域には買収・リソース投下を進めています。Amazonと逆のアプローチをとるウォールマートから日本の小売業が学べることもまだまだ多いはず。
下記の記事は、ウォールマートのネット通販部門方針がまとまっており参考になります。
ウォルマート、アマゾン対抗の秘策 ネット通販ベンチャー出身の部門トップが仕掛けるラストバトル
今後も、Amazonの動きからは目が離せません。
日本の小売業の新しいビジネスモデル、組織デザインは早急に進めていきたいですね。