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黒澤友貴の日報

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マーケティングの仕事をしたり、NPOの仕事をしたり、北欧に視察へ行ったり…領域を越境しながら生きている中での学び・発見を書いたことのまとめマガジン
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記事一覧

どのように実務書を読むと、本当に実務で使えるのか?

こちらのツイートに多くの反響をいただきました。 こちらは、そのNotionリンクです。 何か参考にしていただけていたら嬉しいなと思っていますが、一方で本の情報よりも、どのように本を読むかが重要だろうなと感じている部分もあり… 実務書の活かし方をテーマに簡単にメモを共有します。 本を1人で読んでも実務では活かしにくいのでは?ビジネス実務書は、理解しても組織の共通言語になっていなければ実践しにくいのだと思っています。 1. 個人で理解していること 2. 組織やプロジェクト

インタビュー情報だけで顧客を理解したつもりになってはいけない~人類学的思考とマーケティングリサーチ~

文化人類学や人文知の視点をビジネスに活かそうとする動きが広がっています。 象徴的なリリースとして、COTEN社がサイバーエージェントと人文知分野における業務提携を行うリリースがありました。 私も大学時代に文化人類学を学んでいたこともあり、改めて人類学・人文知の考えの可能性について、考えたことを書いていきたいと思います。 断片情報でわかったつもりになることの危険性マーケティングリサーチをしている中で、最も気をつけたいことは、断片情報を見て「わかったつもり」になってしまうこ

マーケティングを江戸時代から学ぶ~三井越後屋の戦略をトレース~

経営思想家のドラッカーは著書『マネジメント』の中で、東洋におけるマーケティングの始まりを17世紀半ばの三井高利だと書き、三井越後屋のマーケティングがアメリカの百貨店シアーズ・ローバックの基本方針より250年も先んじていたと評価をしていることは有名な話です。 現在使われているマーケティングの考え方は、米国から輸入された考えが大半ですが、改めて日本独自に生み出された考え方を事例を体系化していくことが大切だと考えています。 この記事では、ドラッカーも取り上げた三井越後屋をテーマ

ビジネスモデルと戦略と戦術の違いを定義できているか?

最近感じている戦略を議論する場での課題について。 ビジネスモデルの見直し 戦略の見直し 戦術の見直し この3つが定義が曖昧なまま議論されてしまうことが多いということです。 さらに、経営全体の話なのか、特定事業の話なのか、マーケティングの話なのかの議論もあるため、曖昧なまま議論を進めると空中分解してしまいます。 組織の共通言語としても、変化をつくる上でどこに焦点を当てるかを考える上でも、「定義を明確にしておくこと」が大切だと考えています。 ということで、自分の頭の

理想的なカスタマージャーニーの設計原則

カスタマージャーニーマップの描き方に関して、新発見が多かった論文と出会いました。 理想的なカスタマージャーニーの設計原則 What You’re Getting Wrong About Customer Journeys They shouldn’t always be effortless or predictable. by Ahir Gopaldas and Anton Siebert 紹介されているカスタマージャーニーマップをマトリックスで4分類に分ける考え方は実

マーケティング思考力が高い組織をつくるために、アイリスオーヤマから学べること

一橋ビジネスレビューの2024年夏号を読んでいて、アイリスオーヤマが優れた戦略を表彰するポーター賞を受賞したことと併せてその戦略の裏側について説明された記事がありました。 読んでいて感じたのは、アイリスオーヤマの経営の仕組みには「マーケティング思考をもった組織」をつくるヒントが詰まっているということです。 そのことについてツイートしたのがこちら。 このnoteではアイリスオーヤマの組織の仕組みと、実務への応用方法について整理しながら書いていきます。 先に全体像を。 マ

顧客ニーズを「点」で捉えない、「面」で捉えるために~マックス・ニーフ9つの普遍ニーズを学ぶ~

この「ニーズ」という単語は、マーケティングの仕事をしていれば必ず登場するものです。 本日のnoteでは、当たり前に使っている「ニーズ」の捉え方を整理し、深く考え直すためのヒントをお伝えできたらと思います。 ニーズとは何か?絶対に聞いたことがあるであろう、セオドア・レビット博士の言葉「顧客が欲しいのはドリルではなく、穴である」があります。 つまり、製品の機能や特徴よりも、顧客のニーズや目的を理解することが重要であるというメッセージですね。 ニーズを具体で捉えるためのジョ

ライザップのマーケティングコンサルティング事業開始について考えたこと

ライザップがマーケティングのコンサルティング事業を開始したとのニュースがありました。 このニュースの裏側がどうなっているのか、マーケティング業界に与える影響などについて考えたことを書いていきます。 なんといっても、chocoZAPの成長があっての動きだと思いますので、詳細を見ていきましょう。 chocoZAPの現状はどうなっている?chocoZAPは2022年9月に展開開始しており、2年が経過しようとしています。 2025年3月期の決算説明会資料を読み込むと、choco

「決め打ち」でもなく、「出たとこ勝負」でもない戦略策定プロセスについて

戦略策定のプロジェクトで、よく登場する質問がこの2つです。 答えを出しにくい問いであるため、 あーでもない、こーでもない…と時間を使ってしまいがちです。 最近の関わっているプロジェクトでも、上記の問いの答えを明確にもっておく必要性を感じることがありました。 本日は、自分も改めて思考整理をしてみた「戦略策定プロセス」をテーマに書いていきます。 前提は、意図的戦略と創発的戦略の2つ前提は、戦略の策定プロセスには、意図的・創発的の2つがあること、相互につながりあっていること

生成AI時代だからこそ求められる、ブランドの「オーセンティシティ(信憑性・信頼性)」

「オーセンティシティ」という言葉は、以前からマーケティングコミュニケーション領域で重要性について触れられてきました。 正直、抽象的な言葉でよくわからん… と思ってしまっていたのですが、改めて重要性を理解できてきたので整理していきたいと思います。 ありのままを伝えるブランドコミュニケーションブランドコミュニケーションにおけるオーセンティシティとは、このような文脈で使われています。一番しっくり理解できる記事でした。 Forbes JAPANの記事を引用します。 皆そりゃ「

時系列で市場・顧客の変化を捉える:定点観測から得られる洞察とその価値について

最近読んで興味深かった本が『ストリートファッション1980-2020』です。この本では、1980年から2020年までの40年間、街を舞台にファッションの変遷を定点観測し、その社会的価値観やトレンドの移り変わりを考察しています。 「ストリートファッション1980-2020」の中では、次のように述べられています。 同じ場所で40年もの時間軸で観察され続けたファッションスタイルの変化をもとに社会の価値観やトレンドの移り変わりが考察されています。 このように、特定の事象を一時的

フレームワーク活用を疑ってみる

今日は、今までの自分自身が「良し」としてきた仕組みを否定してみたいと思います。 テーマは、フレームワークです。 自分自身がつくってきたマーケティングトレースは、このような定義をしています。 PEST分析 5Forces分析 STP分析 4P分析 といった、マーケティング基本フレームワークを活用することで、裏側の仕組みを分析するトレーニングとして体系化してきました。 マーケティングトレースはフレームワークを活用しないといけないのか?本日のテーマの「フレームワーク活用」に

Netflix「地面師たち」を見て、コンテンツ体験について考えたこと

Netflixドラマで話題となっている「地面師たち」を見ました。 評判通り面白くて、一気見してしまいました… 実際に起きた地面師詐欺の事件をもとにした、生々しく記憶に訴えかけるストーリー展開、シーン描写。 ネタバレし過ぎない程度に、Netflix・地面師たちから考えた「優れたコンテンツ体験」について書いていきたいと思います。 ポイント①やはり「生々しさ」が人を惹きつけるNetflix作品はテレビ局ではできない、生々しいコンテンツをづくりが特徴だと言われます。 その通

大局観をもってマーケティング戦略を考えるための「経済指標」との付き合い方

「お、ねだん以上。」で有名なニトリのマーケティング戦略を読み解くワークショップの中で、ニトリの成長要因を考えていました。 ニトリの成長は、経済の大きな流れを読む力に支えられている?様々な要因がある中で、「経済・社会全体の流れを掴み、戦略意思決定をする力」こそがニトリの成長を支えていると感じました。 象徴的なエピソードが「リーマンショック時の価格戦略」の意思決定です。 以下は、似鳥会長の書籍からの引用です。 ニトリの沿革を眺めていて、「2008年から2012年に値下げを