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憲法復原の法理

 「法の復原」という言葉があります。これは日本ではあまり使われませんが、「原状回復」という言葉ならば聞いたことがあると言う人は多いと思います。
 「法の復原」も「原状回復」の一つです。

 このことを簡単に言うと、ある法律行為をした時、その法律行為が「無効」である、又は、その法律行為を「取り消し」たならば、その法律行為が行われる前の状態へと「原状回復」しなければならない、というものです。
 例えば、AがBに土地を売却する契約を結んだところ、その契約に重大な不備があって法律上「無効」と判断されたならば、その土地の売買は成立していませんから、土地の所有者はBさんではなくAさんのままです。
 また、AさんがBさんに土地を売却する契約を結んだ後でも、法律上、その契約を後から「取り消し」(解除)出来る場合があります。この場合、Bさんは土地をAさんに返さないといけません。

 これは法律の制定でも同じです。Aという法律が制定された場合、その制定過程に不備があって法律が無効であると判断されると、Aの効力は無くなりAの法律が制定されていない状態へと戻ります。
 また、Aという本来無効な法律の執行によって不利益を得た人のために、原状回復の措置が取られます。
 裁判で度々「この法律の○○という規定は憲法違反だから無効だ!」と主張する人の意見がニュースに流れると思いますが、これは要するに「原状回復」を求めている訴訟です。
 なお、その原告が当該の法律で別に不利益を受けていない場合は、原状回復の必要がないので裁判所は「却下」の判決を下します。

 これを憲法に当て嵌めて考えてみます。
 『日本国憲法』は「帝国憲法第七十三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正」によって成立した、と「上諭」(公布文)には書いてありますが、それは虚偽の内容です。
 確かに『日本国憲法』は「帝国議会の議決」によって成立しましたが、それが『大日本帝国憲法』第73条の規定に則っていないことは、憲法学界では定説です。
 疑うならば、芦田信喜先生の『憲法』でも何でもいいので、図書館にある憲法学者の解説書を読んでください。
 一応、憲法学者の解説書を一々読まなくても、具体的にどこが『大日本帝国憲法』第73条に違反するかは説明できるので、簡単に説明します。

1.『大日本帝国憲法』第73条はあくまでも「条項」改正の規定です。「表題」や「前文」を変える規定ではありません。
2.『大日本帝国憲法』第73条では「天皇が発議」した憲法改正案に対して帝国議会が「拒否」を出来ても、「修正」は出来ません。しかし、実際には帝国議会は『日本国憲法』を制定する際に何か所も「修正」をした上で可決しています。
3.『日本国憲法』前文には「日本国民は(略)この憲法を確定する」とあり、憲法を制定した主体は「天皇」(発議者)でも「帝国議会」(修正者)でもなく、『大日本帝国憲法』第73条に規定の無い「国民」となっています。

 こうなると、『日本国憲法』を成立させた法律行為は『大日本帝国憲法』第73条の規定により「無効」となります。
 しかし、憲法学者たちはまさか『日本国憲法』が無効だと言う訳には行きませんから「八月革命説」を唱えている訳です。
 これは「3」で挙げた、『日本国憲法』前文の「日本国民は、(略)ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(略)これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。」と言う規定を根拠に『日本国憲法』は「国民主権」原理によってできた「革命憲法」である、というものです。
 『日本国憲法』前文にもある通り、「国民主権」は「人類普遍の原理」であって、国民主権を否定していた『大日本帝国憲法』はその「人類普遍の原理」に反するのであるから、その規定に多少違反するところがあっても「革命」と言うことで正当化される、と言うのです。

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