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エジプトが「全国の制服を統一」――ニカーブの着用も禁止

 親軍政党である国民未来党の事実上の独裁下にあるエジプト・アラブ共和国は、令和5年(西暦2023年、皇暦2683年)9月11日、公立・私立を問わずすべての学校において「全国基準」の制服を使用させることを決定した。この決定は9月30日から施行される。
 学校の制服を私立学校まで含めて統一するのは異例のことであり、反発を生むのは必至だ。
 さらに女性の顔を覆う服装であるニカーブの着用も全面的に禁止された。スカーフについては選択制としているが、保護者の把握の下で子供が選ぶことを条件としている。
 エジプト政府はニカーブの着用禁止の理由の一つとして、防犯やカンニング防止を挙げている。
 ニカーブについては、男性の性的な視点から女性を守る目的で身に着けているものもあり、一部のイスラム教徒はニカーブの着用が宗教的な義務と考えていることから、信教の自由との兼ね合いで議論になることは確実である。
 なお、ニカーブを禁止した国はフランス、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、スイスが挙げられ、いずれも世俗派の力が強いキリスト教圏の国である。ドイツ、オランダ、ノルウェー、イタリア、スペイン、カナダでも、学校や病院、公共交通機関でのニカーブ着用が禁止されているが、イスラム教徒の多いアラブ圏での禁止は異例。
 エジプトは現在、下院で過半数を得ている親軍政党の国民未来党を中心に10政党による連立政権で運営されており、この連立政権には下院で議席を得ている政党では光明党を除く全政党が参加している。また、唯一の野党である光明党も軍部によるクーデターを容認しているなど、事実上の軍部独裁の状況となっている。
 エジプトでは平成23年(西暦2011年、皇暦2671年)の「民主化」を受けて平成24年(西暦2012年、皇暦2672年)に穏健派イスラム主義勢力「ムスリム同胞団」の元議長であるムハンマド・ムルシー氏が大統領に選出されるなど、イスラム主義勢力が国民の支持を受けていた。
 一方で、イスラム主義勢力を警戒する軍部は平成25年(西暦2013年、皇暦2673年)にクーデターを起こして憲法を停止、イスラム主義勢力を弾圧した経緯がある。
 欧米諸国のリベラル派は、女性が露出狂になる権利は擁護する一方で、ニカーブやスカーフについては女性自身の意志であっても「女性差別」であると攻撃しており、そうしたイスラムヘイトの国際世論が欧米諸国との協調を重視している軍部の動向を左右している可能性が高いと言える。
 だが、このような民意を無視した強権的な政治は、却ってイスラム主義勢力の過激派に力を貸すことになることになると、私は予想している。


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