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「対物から対人へ」の考え方

今我々薬剤師の置かれている環境は激動を求められています。
それは0402通知薬機法の改正2020調剤報酬改定を見れば明らかですが、これらすべての改革の源流は2015年10月23日に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」にあります。
この時ビジョンとして挙げられたのは「立地から機能へ」「対物から対人へ」「バラバラから1つへ」という3つのキーワードでした。

今日は「対物から対人へ」にフォーカスを当て、日々の業務の中で僕が大事にしている考え方を共有したいと思います。

「対物から対人へ」が我々に提示したのは、薬を渡すまでではなく渡した後にシフトせよということでした。
つまり治療方針を決定(Plan)し、処方→薬を渡す(Do)までではなく、効果判定・薬学的評価(Check)を行い医師にフィードバック(Action)することで次回の治療方針や処方内容に反映(Plan)させなさいよということです。
そうは言っても現状のP→Dをこなすことで精一杯だし、それで十二分にお給料ももらえているし、そもそもC→Aに価値はあるのか?と憤りと懐疑が生まれることは普通の反応だと思います。

一方で僕が感じたのは、この一連のサイクルを回すことは当然だろうなということです。なぜならこれまでの旧来的な薬局を薬を売る小売業と考えた場合、P→Dで仕事を完結させているということは「売った商品が不良品であったかどうかはどうでもいい」ということになります。一般的な小売業として考えるとかなり異常な体質ですよね。例えば車屋さんで思い切って新車を買った場合、後に不良やトラブルが起こった際には車屋さんに電話をかければ修理等を受けたり、(契約によりますが)定期的なメンテナンスを受けることができます。いわゆるアフターサービスと言われるものですが、実は薬局にはこれがあまりなかったわけです。(指導料としてお金はいただいていたのですが・・)売ったら売りっぱなしで、それが実際に問題なく使えているのかということを半ばないがしろにしていた部分もあったのだと思います。
そこで当然の発想としてアフターサービスはしなさいよ。果ては、しないなら薬剤師の存在そのものがどうなのかとまで言われてきました。

では改めて薬局におけるアフターサービスとはなんなのかということを考えてみます。まずは処方箋を受け付けて疑義がないことを確認し、患者さんとのやり取りの中で治療方針通りに効果的な薬の使い方ができるよう指導します。(P→D)
次に患者さんの状態と薬剤の特性に合わせたアフターサービスを設計し実行します。(C)例えば体幹部に湿疹がある高齢男性にステロイド外用剤と抗ヒスタミン剤が処方されており、次回の受診予定が14 日後の場合。外用剤がうまく塗れているかどうかが治療の成否を左右するので3日後くらいに再来局してもらい、フォローアップします。そこでうまく塗れていればそのまま継続していただくことにしますし、そうでない場合は再度指導し、受診までに再度フォローアップする必要があると判断することもあるでしょう。さらにこれまでの経過や評価をトレーシングレポート等を使って医師に報告します。(A)

ここまでの内容は薬剤師法に明文化されており、違反した場合は罰せられる可能性があります。

改正薬剤師法
第25条の2第2項
薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない

ただし法律に書かれているからやらなきゃいけないんだ〜というのはダサいのでよしましょう。誰のためにもなりません。

薬局を小売業として車屋さんを例えにして述べてきましたが、実際には薬局は単なる小売業ではないと考えています。
P→Dで完結していた時は単なる小売業とも言えるでしょうが、C→Aにシフトした時、それは第3次産業の中でも医療業種の多くが該当する感情労働と呼ばれる業務内容に変貌すると考えています。「体調が良くなって嬉しい」という体験や感情を売るサービスに重心が移動します。

このように「対物から対人へ」というキーワードをそりゃそうだよなぁと受け取るためには、自分から薬剤師という前提を捨ててから考えることを大切にしています。学生実習や現場での経験や習慣は大事なのですが、激動する時代の中で冷静に情報を捉えてアクションするためにはそれらを捨てることも必要なのかもしれません。
明日はそれらの捨て方について、僕なりの考えを共有したいと思っています。

今日もありがとうございました。

いつも読んでくださりありがとうごさいます。みなさんが読んでくださることが活力になっています。