「二十歳の原点」

映画があったなんて知らなかった。

「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である」。

法大生時代に読んだねぇ、俺も。Amazonで10円(!)でゲット。“希望をたくして”太宰治の全集を買っちゃいかんじゃろ(笑)。

概ね、社会とは矛盾して理不尽なものであるが、若さ故の純粋さそのままで、それにぶつかっていくと、必ず疲弊して自分を痛める。

全共闘華やかなりし時代だったから、きっと内省的なものに目を向ける雰囲気もあったのだろう。小さな学内で、例え「闘争勝利」を勝ち取ったとしても、それが革命に結び付くようなことは絶対にないのだ。

フツーは、なんとか折り合いをつけて乗り切るのが、大人になることでもあるのに。彼女はそれができなかったのだと思う。つまりは、漫画家の山田花子と同様、激しい“厨二病”だったのだ。

きっと衝動的に線路に飛び降りてしまったのだね。日記の初めの頃から「自殺でもしようかなあ」と書いてるし。

「内なるバリケードを築き、常にイメージを積み上げていかなければならない。私は体制の中で生きている。人間が自由であろうとすればする程、体制の矛盾とぶつかり体制をはみ出さざるを得なくなる。体制の矛盾は自己矛盾として現れ、自己矛盾をつきつめあるものを否定し自己を発展させるという過程が、内なるバリケードを積み上げていくということなのだ」。

「知ろうとすることは存在し、知ろうとしないことは存在しない。お前はお前自身を知らない」というパゾリーニの言葉が引用される。

彼女の頭に最初に手を乗せた彼を熱烈に愛する。
「毎日彼の事ばかり考えている。彼と唇を合わせたり、力強く抱き合ったり、優しくこのちっちゃな胸を触ったり、私は、彼の痩せた体や唇を愛撫したり、シンボルであるオチンチンを子供の遊びのように手で触ってみたり、常に彼と肉体の関係を持ちたいと願っている」…。こういう下りを読むと微笑ましくてホッとするね。

まだ二十歳だったとはいえ、彼女はまだ時代と共に消えたから良いだろう。当時の政治的気質を今だに引きずって老害と化してる同世代がウジャウジャいるのに。俺なんかもうすぐ“六十歳の原点”なのにさ。

https://www.takanoetsuko.com/


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。