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「午後の曳航」

三島先生の小説では結構好きな「午後の曳航」。面白くて、これまで合わせて3回も読んじゃった。

あらすじを簡単に言えば、憧れる英雄の船乗りだった竜二が、船を降りて陸に上がり母と結婚するに至って、矮小して堕落したと絶望して屈辱を味わった少年・登が、同級生と作る秘密グループと竜二を処刑すると決め、睡眠薬入りの紅茶を飲ます…。

主人公の登が所属する同級生6人で作る秘密グループは、「世界は単純な記号と決定で出来上がっている」という首領と呼ばれる少年の下、世界の圧倒的な虚しさと大人達の欺瞞を証明し、感情のないことを訓練し、強くあることを模索している。まさに“恐るべき子供たち”(by コクトー)で、いつもの、惚れ惚れとする三島節で彼らの日常が語られる。

三島先生の小説には、美に裏切られ(勝手にそう思い)、美に復讐する物語が実に多い。「金閣寺」もそうだ。

皆で、拾った仔猫を撲殺して、メスで解剖するシーンは凄まじい。首領の「フランネルみたいな切り心地だぜ」というセリフが、初めてこの小説を読んだ若い時から、頭の中でループしてるくらいに。「それにしても血を見ると、何て気分がせいせいするんだろう!」。

登が、自分の部屋で、タンスの奥にあった穴から隣の母の部屋を覗き、母と竜二の情事も垣間見る。「そして登はおどろきを以て眺めた。彼の腹の深い毛をつんざいて誇らしげに聳え立つつややかな仏塔を」。スゲ〜文学的表現(笑)。

竜二の乗った大型船舶や、母の経営する輸入洋品店、海と海岸の風景の細かな描写はどうでもいい、覗き見た母と竜二の愛し合う行為と、“恐るべき子供たち”の考え・行動だけでも、俺には読む価値がとても高い素晴らしい小説だ。

小説は、睡眠薬を入れた紅茶を飲ますところで終わるが、この後いったいどうなるのか、スゲ〜気になるね。仔猫みたく解剖するのだろうけど。

観たかったけど、観れなかった映画をYouTubeで見っけ!いい時代になったねぇ。
早速観たけど、首領と登(外人だけど)が美少年でドキドキもの!!

脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。