「ひとはなぜ戦争をするのか」
20世紀の偉人2人の、戦争についての1回だけの往復書簡。
物理学者・アインシュタインが手紙を出して、心理学者・フロイトが返事を書いた。
2人ともユダヤ人でナチスから逃れて亡命し、この後、近代最大最悪の第二次世界大戦が勃発している。
「人はなぜ戦争をするのか」って、そりゃあ、人間は戦争を体現するものだからだろう。
社会の中では、人間は常に争ってる。最近は、暴力を振るうことは少なくなったものの、敵を作り、いがみ合って、貶め合って、イライラとムカついて、イジメて、差別して、論争して…。日常で、他人に対して、少しでもイラッとしない日なんて、ほとんどないんじゃないか。
それがなぜ戦争?というけど、戦争はそんな小さな個人的な思いであっても、最も社会的に認められた、最も大きな争いに発展したものだと思うからだ。つまり、戦争は人間の本質を現すものだからだと思う。
アインシュタインも、「人間には本能的な欲求が潜んでいる。憎悪に駆られ、相手を絶滅させようとする欲求が」あると書いてる。つまり戦争は人間の攻撃的な本性ゆえに決してなくならないのだ、と。その上で、「人間の心を特定の方向に導き、憎悪と破壊という心の病に犯されないようにする事はできるのか」と問うている。
でも、人類は争いばかりの歴史を経て少しずつ学習してきた。ヒューマニズムに期待して、道徳と規律、秩序を学んだ。そして、社会を発展させてきたのだ。時折、それが非人間的なイデオロギーによって崩れることはあっても。
今の人類の短い歴史では、人間の根源的な本質が社会に合わせて変わるのは(徐々に変わるとしても)、まだ時期尚早なんじゃないだろうか。
人間の本質が戦争を好むからといって、ほっとくわけにはいかない。度々、戦争が起こっても、やっぱり“反戦・厭戦“ということは訴え続けるべきであろう。
一番、効果的だと思うのは、戦争の真実、残虐性、死、狂気を、全て隠すことなく、嫌というほど繰り返し、徹底的に見せつけることだと思うが。つまり戦争の抑止こそヒューマニズムに期待するということだ。
フロイトは心理学者らしく、人間の破壊欲動(死の欲動)という概念を用いて戦争を解き明かす。人間には生の欲動(エロス)の一方で、死の欲動(タナトス)も備わっており、それが人間が破壊を求める大きな理由で、人間が制定する国家や法律は全て暴力コントロールの体系である…云々。フロイトはあまり好きぢゃないのでわからん(笑)。人間が生と破壊と両面を求める、矛盾したアンヴィバレンツな存在であることは納得だけど。
「戦争を確実に防ごうと思えば、皆が一致協力して強大な中央集権的な権力を作り上げ、何か利害の対立が起きたときには、この権力に裁定を委ねるべき」。そこで国際連盟が出てくるわけだが、20世紀初頭という時代もあるけど、結局、国際連盟も、戦後の国際連合も上手く機能してないよねぇ。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。