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「遺魂」

あとがきに「今までになかった、全く新しい三島論だ」とあるけど、論というより、鈴木さんの体験話だなぁ。

同じ話が何回も出てきたり、“あれはこうだった。それはそうだった。これはこうだった。”と短いセンテンスが続くのは、鈴木さんらしくて読みやすいのだが、やっぱり下手かもね。それに、違うでしょ〜、ちょっと考えが横道にズレてるんじゃ…と思うような記述もけっこうあった。

あまり目新しいものはなく、ほとんど知ってることだったけど、三島先生と楯の会が、岡本理研ゴムのコンドームの広告に揶揄されて使われてたのは初めて知った。

野村秋介氏は、「週刊朝日」に「風の会」を「虱の会」と漫画で揶揄されたことがきっかけで、朝日新聞の本社で拳銃自決となったが、三島先生はどうやらこの広告を知ってて笑ってたらしい。(俺が考える)三島先生らしいエピソードだ。

鈴木邦男さんって、三島先生の小説で言えば、「豊饒の海」の本多繁邦みたいだ。いつも主人公の側にいる傍観者。圧倒的な読書量(ホントに理解してるのかなぁ 笑)と多彩な人脈で、とにかく知識と経験はスゴイと思うが、行動の人ではないと思う。

鈴木さんは、三島先生をあくまで政治の世界で語るが、俺は、いわゆる右翼的思想も、天皇も、最期の切腹も、三島美学を完成させるための材料だったと考えてる。つまり、戦後民主主義という相対の世界で、天皇という絶対を求めることの不可能とアイロニー、エロチシズムの物語で、それは、死でしか完結しなかった、ということだ。三島先生はそういう考えをたいへん嫌っていたが。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。