【邦画】「影武者」

黒澤明監督らしい3時間弱の長丁場の戦国時代劇「影武者」。主演は仲代達矢。

時代劇の一大スペクタクル巨編で、世界での評価が高い。

武将の武田信玄が夜中、不意に城から狙撃される。
幼い嫡孫が成長するまでは、自分の死を隠して、3年は動かずに領地を固めてくれとの遺言を残して死んだために、信玄の弟と重臣らは、身内にも信玄の死を明らかにせずに、信玄にソックリの、死罪直前の盗人を、信玄の影武者として立てることにする…。

たくさんのエキストラを使った城や戦場のシーンなど、とにかくスケールがデカい。クロサワさんならではの大胆な画作りはやっぱり流石といえるだろう。

仲代達矢演じる影武者が、周りの助けもあって、徐々に信玄のような武将へと成長していく…信玄に同化していく様子は、バレないかのハラハラもあって、とてもスリリングだ。やっぱり、地位・環境が人間を作るんだねー。

でも、あっけなくニセモノってことがバレる。落馬して、手当のために肩を出すが、側室の女たちに、あるはずの刀傷がないのを見られたことで。せっかく嫡孫にも「オジジ、オジジ」と慕われていたのに。

お役御免となった影武者だが、織田信長・徳川家康の連合軍との戦いの後、武田軍側の死体が広がる死屍累々の中、独り槍を持って突進していく。

影武者とはいえ一時期、武将の地位にあった者の、過去を忘れることができない、なんとも哀しい結末だ。

一方で、信玄が死んだのに、影武者のせいで跡目を継げない弟の葛藤もある。

天下を取ることが大きな価値観だった戦国時代ゆえの人間模様だね。

しかし、後半の仲代達矢の影武者が、白塗りの不気味な顔となって、まるで山崎力の「八つ墓村」の落武者みたいぢゃないか。

世界の独裁者の国では、必ず影武者説はあるけど、実際にはどうだかわからないが、表向きには影武者でも立てないと、それだけ、本当に命が危険にさらされているのか、もしくは、独裁者の病的な不安や心配、猜疑心のせいなのかだろうねー。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。