「壁をこえて」

地元図書館で見つけた「ハンセン病」問題の啓発DVD。隣の合志市にある同病療養所・菊池恵楓園の歴史でもある。

前に見学に行った時に会って話をした入所者(自治会会長だった)も出演して説明していた。

個よりも集団の力が重んじられる社会において、見た目も異質であり、伝染・遺伝が疑われる、忌み嫌われる病気となれば、大衆の、格好のイジメの対象となる。まさに、ハンセン病患者がそれだったのだ。

強制隔離となるまでは、患者は家庭や地元からも放逐されて、神社仏閣(熊本では加藤清正公の本妙寺が有名)に集まり、物乞いをやって、なんとかしのいでいたという。

たくさんの外国人が日本を訪れるようになって、最初に、外国人が患者の置かれた現状を憂いて入所施設を作ることになる。そして、政府も、各地に強制隔離の施設を開設することになるのだ。

ハンセン病の特効薬プロミンが出来るまでは、伝染や遺伝など、誤った知識が流布されて、患者を苦しめた。

患者は一旦隔離されると、外に出ることは許されずに、夫婦となって妊娠したとしても、強制的に堕胎させられるなど、悪名高き「らい予防法」による人権無視の政策が長い間続いた。

施設と外を遮断する高いコンクリートの壁は、エルサレムの“嘆きの壁”みたいだ。

そのせいで、近代になっても、差別やイジメが収まることはなく、平成になってもホテル宿泊拒否事件などが起こったりしている。

特に、酷いのは施設や療養所に送られてくる匿名のハガキ・手紙の数々。差別、侮蔑、罵詈雑言を書き連ねた内容で、大衆の恐ろしさを感じる。こんなことをするエネルギーがあるのなら、別のことに使えば良いのに。弱者が弱者を貶める(イジメる)ことで、日頃の不安や不満、恨みなどを解消させ溜飲を下げるという日本社会に有りがちの構図である。

コロナ禍で閉じてた菊池恵楓園だが、リニューアルオープンとなったようなので、また見学に行こうかと思う。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。