【古典邦画】「遠い雲」

木下惠介監督の、1955(昭和30)年の作品「遠い雲」。デコちゃん(高峰秀子)が主演級の、大人の悲劇的な恋愛ドラマだ。

愛してなかったが、市議会議員の息子と結婚した冬子(デコちゃん)。
が、すぐに夫に死なれて幼い娘と、裕福な夫の実家に暮らす。
かつて、冬子と恋仲だった圭三が、東京から一時、実家に帰って来る。
冬子は、夫の墓参りで、ばったり圭三に会う。
2人は、それぞれ想いを持ちながら再会すると、圭三は冬子に思いを伝えるが、冬子は、娘がいるからと動いた心を諌める。
義弟の俊介が冬子と結婚する意思があることを打ち明けて、冬子の心は圭三と俊介の間で揺れ動く。
圭三は、「僕と一緒に東京に行こう」と冬子に手紙を書くが、冬子は一旦断ったものの、妹に「姉さんは自分の心を偽っているわ。好きなら行くのが本当よ」と言われて、意を決した冬子は駅に行くが、仕事から帰った俊介に会う。
俊介の「行かないで下さい」という言葉に、冬子は足を止める。
列車は走り出す…。

昔、圭三が冬子から借りてそのまま持ってた本、ジイドの「窄き門」が線路脇に捨てられている…なんて文学的なんでしょうか。

木下監督なりの極上のメロドラマに仕上がっている。

もしも、冬子が幼い娘も置いて、圭三と東京に行ってたら、多分、破滅の道を辿ったろう。

まだまだ結婚で親や家の意向が優先される時代、冬子が「世間が怖い」というと、周りが、「自分の意思で決めろ」と反論する。まず世間を気にすることの愚かさ、世間がなんと言おうと、女も自分で幸せを掴む権利がある…木下監督が、“女性の自立“を訴えた内容でもある。

途中、「華厳の滝」のような場所が出て来るが、藤村操を意識してるのか?


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。