【洋画】「俺たちに明日はない」

1967年の、有名なアメリカン・ニューシネマ(ベトナム戦争を背景に反体制的な若者を扱った作品)の先駆的作品「俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde)」(アーサー・ペン監督)だ。

ボニー&クライドの犯罪逃避行と、ラストの2人への一斉射撃はチョー有名だが、ちゃんと観たのは初めて。

実際にあったボニー(・パーカー)とクライド(・バロウ)のカップルが起こした連続殺人強盗事件を映画化したものだ。

世界恐慌の時代に、ムショを出たばかりの不良青年クライドに、平凡な生活に退屈してたウェイトレスのボニーは興味を持って近付き、2人は車を盗んで、町から町へと移動しながら銀行に強盗に押し入る。
途中で、頭の弱いガソリンスタンドの店員や、クライドの兄バックとその妻ブランチも加えて、彼らはバロウズ・ギャングを名乗り、強盗を繰り返すようになって、マスコミに連日、報道されることに。
そして、徐々に、警官や保安官、テキサス・レンジャー達に追い詰められていく…。

銀行に来た貧しい客からは、一切、金を奪うことをしないので、“義賊”のように思われたこともあって、市民の人気を得ていく。

当時は、大不況の時代ということもあって、2人のアナーキーな同行を、マスコミを通して注目して、まるで憂さ晴らしのように、彼らを英雄視する市民も大勢いたという。実際には凶悪犯罪者でしかないのだが。

犯罪も、凶悪になればなるほど、一定のファンが現れるのは、大昔からそうだ。道徳や倫理、秩序を超えた人間に対する憧れに似た、根源的なものをくすぐる動物的な何かがあるのだろうか。

当時、「映画史上、最も血生臭い死のシーンの一つ」と評されたラストは、買い物から帰って来たボニーとクライドが、待ち伏せしていた警官らの一斉射撃でハチの巣のようになって絶命するが、こんなに短かったっけ?スローモーションで穴だらけになって倒れたと思ってたけどね。

確か実際には2人で50数発受けたんだっけな。2人の乗ってた穴だらけの車も、どこかで展示してあったはず。

こういう衝撃的で印象的な最後を作るって、まさにアメリカらしい映画だね。

まあ、でも、無軌道で自暴自棄、刹那・衝動・破滅的な若者が、最期に華々しく血だらけで死ぬというスタイルは、確かに体制側の保守的な人間を震え上がらせるには充分だろうね。アンチ・ヒーローものの嚆矢だ。

クライドは犯罪には長けてるが、最初、ボニーが迫ると、「女は苦手なんだ」とそっぽを向いてしまう。撃たれる前になってやっと肉体関係を持つが、きっとそれまで童貞だったのかも。

最初はクライドの犯罪に驚いてたボニーだけど、一旦、覚悟を決めると、やはり女は強い。自ら機関銃を持って、警官らと撃ち合うなど、時に主導的な役割もするようになる。

しかし、密かに親と会ったり、堂々と名前を名乗ったり、当時はまだ大らかだったのだろうか。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。