「禁色」

これは、いわゆるLGBT、セクシャル・マイノリティの小説である。

三島由紀夫先生お得意(?)の男色(ゲイ)を扱ったもので、初めて読んだ時よりもメッチャ長ったらしく感じたけど、初期の出世作「仮面の告白」に続くもので、若い頃ゆえ、躊躇なく、これでもかと言葉を溢れ過ぎるほどに書いている。今、同じ内容で書いたら、頁数も半分以下で済むだろう。

決して女を愛することができない、稀に見る美青年・南悠一を巡って、彼を陰で操る醜い老作家・檜俊輔が過去に自分を裏切った女らに復讐を企てる物語。

俊輔の命令で結婚した妻となる康子や、ゲイの夫を持つ美人局をやってた鏑木元伯爵夫人、俊輔の元恋人の穂高恭子、銀座にあったゲイバーのウエイターなどなど、三島ファンの俺には三島先生のプライベートで知ってることばかりで、これは三島先生のゲイ体験をそのまま小説化したものじゃないだろうかと思う。

しかし、登場人物の様子や表情だけで、ゆうに数頁を費やす、この表現力と溢れ出る言葉の数々ったら。

文字を追うのが辛くなって、読む者を言葉で完膚なきまでに叩きのめそうとしてるようにしか思えないね。

例えば、悠一が自分の美貌を利用して女を誘惑しベッドに寝かせて、暗闇の中で俊輔と代わって、俊輔がその女と寝る場面があるが、卑劣な暴行に過ぎないけど、精神と美の問題を自信ありげに語って、女を諦めさせるなんざ…凄まじいなぁ。

最後、自分もいつの間にか悠一を愛していることを自覚した俊輔は、全財産を彼に譲ると言い遺し、静かに自殺する。やはり三島先生らしいラストだ。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。