【邦画】「戦争と人間」

1970(昭和45)年から1973(昭和48)年にかけて公開された日活製作の大作「戦争と人間」3部作を、ついにAmazonプライムで鑑賞。

3部合わせて、9時間23分もあって、数日をかけて少しづつ観た。

監督は山本薩夫。原作は、五味川純平の大河戦争歴史小説で、この長さは大作「人間の條件」(9時間31分、まだ観てない)と同じだ。

第1部「運命の序曲」、第2部「愛と悲しみの山河」、第3部「完結篇」。ブルジョワ財閥・伍代家の人物を中心にした人間群像ドラマだ。

大戦前の日本は、文明開花後、天皇を担ぎ出して、無理して西洋に阿った挙句、富める者と貧する者の差が激しくなり、国力は疲弊して、時局を読めず、資源もないのに、自暴自棄的に個を捨てて、侵略・弾圧・排外の矛先をアジアに向けて、非科学的な精神主義に頼るしか、後はなかったのだろうか?

個人で、いくら時代に抗っても、時代のうねりには逆らうことはできないのだね。個人の力はあまりも小さい。戦争へ突き進む日本の歴史を知ることができたというより、数日かけても、9時間以上の映画を観たという達成感が大きい(笑)。

描かれているのは、1928(昭和3)年の張作霖爆殺事件の前から、1939(昭和14)年のノモンハン事件まで。

本当は第4部も予定され、太平洋戦争、東京裁判と終結まで描かれるはずだったが、豪華なキャストと海外での大規模な撮影で予算がなくなり、無理矢理、第3部で終わりとなったという。従って第3部「完結編」は後半、経緯説明が多く、駆け足で辿る形で、中途半端な感じは否めないね。

当時の大陸の、中央政権、共産ゲリラ、朝鮮ゲリラ、大陸浪人、匪賊、そして、満洲国を作った日本の関東軍(大日本帝国陸軍)が、覇権争いで鎬を削る中、伍代家の、それぞれの立場の男女のロマンスも描かれ、珍しくヌードも絡みも多い。

山本監督の意図するものだと思うけど、左寄りの反軍・反戦の思想が貫かれている。多分、批判も多かったのでは?

それでも、内地では皇道派と統制派に別れて、満州では事後報告で暴走する関東軍の動きが雌雄を決するのだ。どうしようもなく戦争の時代だったのだなぁ。

それにしても、関東軍や、権力を笠に着た官憲の、バカっぷりとチョー居丈高な態度、容赦ない暴力、お馴染みの噴飯物の精神主義には、映画とはいえ、呆れて腹が立って、嫌気が差して不快になるね。大衆もほとんどはバカで、バカぢゃない人も、ある面ではバカになったり、普段バカなのに、この時ばかりはと天才になったりするものだね。きっと。

しかし、三國連太郎、丹波哲郎、大滝秀治、浅丘ルリ子、石原裕次郎、吉永小百合、北大路欣也、高橋英樹、加藤剛、岸田今日子、地井武男、二谷英明、松原智恵子、西村晃、佐久間良子…まだまだ、ちょい役も含めて、昭和の豪華キャストが揃ってる。しかも中国語がめっちゃ上手い。

「お金持ちは貧乏人の味方には決してなり得ない」

「左傾化した青年たちが考えているほど、革命とやらは近くにあるものでないし、今のこの社会も、そんなに早く老朽化するものでもないのだよ」

「愛国心に燃え立つ貴方が羨ましい。民族と国家の品位や尊厳が求める方向と矛盾しない愛国心がね。日本は逆だ。愛国即戦争、戦争即他国への侵略という結論になりかねない」

「信じるなよ。男でも女でも、思想でも、本当によくわかるまで。それが後悔しないためのただひとつの方法だ」


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。