【古典映画】「女優須磨子の恋」

まだYouTubeに鑑賞可能な溝口健二監督の映画があった。1947(昭和27)年公開の「女優須磨子の恋」。

モデルの松井須磨子は、明治から大正にかけて活躍した女優・歌手で、離婚、不倫、整形、自殺と波乱万丈の人生を送ったことで知られるという。

彼女と劇作家との不倫の恋を描いたもので、松井須磨子を演じたのが田中絹代で、必然的に溝口健二監督との仲を想起させる。

劇作家が、須磨子に対して罵倒しつつも、何回も何回もやらせて厳しく演技指導する場面があるが、溝口監督も田中絹代に対してそうだったんじゃ。

劇中劇で、田中絹代が、イプセンの「人形の家」のヒロイン、ノラを演じるが、やっぱり洋装のドレスがイマイチ似合わないね。彼女は和服の薄幸な女が良く似合うと思うが。

山村聰が演じる劇作家の島村抱月は、欧州の近代的な演劇であるところの“新劇運動”の立役者で、商業主義を批判して、仲間と共に芸術とはどうあるべきかを熱く語るシーンがあるが、多分、溝口監督そのままだったのではないか。

東野英治郎が、シェイクスピアを翻訳した坪内逍遥の役で出てる。

早稲田の演劇研究所では、「人形の家」を公演することが決まったが、劇作家の島村抱月が、ノラを演じる女優がいないと悩んでいた。
その時に、夫婦喧嘩をして別れたばかりの松井須磨子に出会う。
島村は演劇研究所の所員だった須磨子をノラ役に抜擢、厳しい稽古の末に、公演は大盛況で終わる。
須磨子と島村は、公演を通してお互いに惹かれ合うことになる。
島村は研究所も自分の家庭も捨てて、須磨子と共に新しい芸術座を立ち上げる…。

芸術至上主義で、全てを演劇に投じた2人だが、やっぱり経営が成り立たずに破滅の道を辿る。旅回りにまで落ちるが、それでも新劇への情熱は失わなかった。

そして、芸術座が、やっと日の目をみる頃には、ムリがたたって島村は頓死、激しく悲しみ絶望する須磨子だったが、なんとか公演を乗り切って、彼女も自殺という悲劇で幕。

完成度の高い作品とはいえないけど、島村抱月と松井須磨子の関係のように、溝口監督と田中絹代の関係を想像できるだけでも良しとしよう。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。