「禁足地巡礼」

禁足地とは、「不合理な理由で入場を禁じられている場所」のことだという。不合理な理由とは、主に宗教的な教義やオカルト的なこと。

神聖な土地だったり、逆に穢れた場所だったりするが、不入の地だから、そこに入った罪人や逃亡者たちは追及の手を逃れて赦されると見なされてもいた。

日本における禁足地は、何もない場所、何もない空間、自然のままの状態であることが多い。人間の手による行為が、聖なる土地の場所性を濁らせて隠してしまうことになりかねないからだ。何もないことが説得力が増すのだ。

よくあるのが女人禁制だけど、少ないけど、もちろん男子禁制もある。簡単にいうと、男が祭祀者なら女が、女が祭祀者なら男が禁足の対象になる。基本、“穢れ”を怖れるということだ。

今だに残ってる禁足地は、時を経るうちに、なぜ禁足地となったのかの理由が忘れられて、しかし、入ってはいけない理由がないのは具合が悪いということで、「かつてこの場所で人が死んだ」など、不幸な理由(伝承)が後付けされることが多い。

最大の禁足地は天皇陵だろうが、心霊スポットなど、土地開発が進んでも、全国各地に点在する。そして、怖い思いをしながらも、脚を踏み入れたりする。

それは、タブーを犯す欲求と、普段の日常とは違った“異界”をちょっとだけ体験して、また日常に戻ってきたいという“通過儀礼”(オトナになる)のような意味合いを持ってるのではないか、と著者は書いている。禁足地も、死と再生の物語を作っているのだ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。