【洋画】「カッコーの巣の上で」

コレも反体制的な人間を扱ったアメリカン・ニュー・シネマの一つ、「カッコーの巣の上で(One Flew Over the Cuckoo's Nest)」(1975年、ミロス・フォアマン監督)。

最初に観たのは、ちょうど元妻が統失を発病して酷かった頃で、そのこともあって、いろいろと考えさせられたものだ。やっぱり何度観ても、ラストは衝撃的だった。

刑務所の強制労働から逃れるために精神病を装って、ある精神病院に入ったマクマーフィ(ジャック・ニコルソン)。
そこは婦長が徹底した管理体制を強いて患者たちを支配してた。
マクマーフィは、婦長と対立しながらも、患者たちと仲良くなって、彼らに生きる希望を与えていくが…。

60年代の精神病院が舞台だが、本物の病院の病棟を使ったというから、患者たちにも本物の入院患者が混じってるのかしら。

仲間を連れて脱走したり、女を入れて酒盛りしたり、ハチャメチャやってるから、閉鎖病棟という理不尽な環境の中で、欲望や楽しみを抑えられて、正常であったマクマーフィは当然、反発することになる。結果的に、この社会の中での人間の存在、尊厳、権利とは何ぞや?と問いかける内容ともなってる。

本格的に脱走を試みようとしたマクマーフィだが失敗、激昂して婦長の首を締めるものの、彼は捕まって隔離され、悪名高き“ロボトミー手術”を受けて、廃人同様の姿となる。そして、そんな姿を憐れに思う仲間の手によって窒息死することに…。

電気ショック療法やロボトミー手術などは、患者の人権など人道的な問題もあって、現在では、一部を除いて認められなくなっている。ケネディ大統領の妹ローズマリーがロボトミー手術を受けたことで有名。彼女は廃人同様となって隠されても2005年86歳まで施設で生きていた。

精神病は、人間誰しも常識とはかけ離れた狂気に値する部分を持っているわけで、ただ、それに対する“メタ認知”が働かないだけではないか、と映画を観て思ったりもする。

ただ薬を与えて閉じ込めて大人しくさせて、回復するのを待つ。個人それぞれの病状を理解することなく、同様のカリキュラムを受けさせるだけ。治療するというよりも、壊れた役に立たない人間を社会から隔離するだけの施設と化している。昔は、コレが現状だったのだろう。

「カッコーの巣」は精神病院の蔑称なのね。最後に、マクマーフィを窒息死させたネイティブ・アメリカンの大男チーフが、病棟の窓を破壊して脱走するが、自由とは何かを問い、自由を求めて飛び出すという象徴的なシーンとなっていて感動。

俺の元妻も、現状、施設以外では生きていくのが難しいと思われ、当時、散々苦労した時は、ロボトミー手術か、安楽死させてあげたいと思ったものだった。だから、この映画は何度観ても衝撃的で辛い。

あ、ジャック・ニコルソンの自然な狂気の演技はメッチャ素晴らしいね。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。