「『少年A』この子を生んで……」

病院の近くのブックオフで見つけた。好きな犯罪ドキュメントものなんだが…。

手記を読む限り、虐待も、ネグレクトも、異常な溺愛もない、ちょっと甘く感じるだけで極普通の家庭で育った14歳の「酒鬼薔薇聖斗」こと少年A。

中学に入学する頃から、ケンカや喫煙、万引きなどの問題行動が多くなり(隠れて動物虐待があったけど)、両親はしょっちゅう学校に呼び出されることになる。でも、表向きは、まだまだよくあるヤンチャなヤンキーの例みたいで、心の内に「人を殺してみたい」という深い闇の萌芽を見つけるには、確かに親だってわからないのは頷ける。

秋葉事件の加藤くんだったら、母親の異常過ぎるほどの厳しい教育方針というわかりやすい例があるが、少年Aの場合は、子供に理解ある母親と子煩悩な父親の間で愛情一杯に育ち、子供の自主性に任せる「ゆとり教育」を思わせる家庭環境で、手記を読む限り、特別異常なことは何もない。

こうした全く普通の家庭環境でどうして異常な殺人者が生まれるのか。前兆となる何かのキッカケはあるのだろうが、後で考えてみれば、あれもこれもとあらゆる行動が挙げられそうで、これだという決め手もなく、わからないのが当たり前だろう。

でも、「酒鬼薔薇聖斗」というモンスターは出来上がってしまったのだ。自主性を重んじ自由にさせることが実はダメな気もするし、その逆もまたしかりだ。まるで神があみだくじか何かで彼は犯罪者、彼は常識人と選別してるようだ。これは運命かもしれないと思わせる。

例え、手塩にかけて育てようと犯罪者は生まれるし、いい加減に育てても立派な人物になったりするから、改めて教育ってのは難しいと思う。少年Aの両親も悔恨の内に自問する。「私たち親は、どこで、何を、間違えたのか?」。

逮捕前、少年Aは登校拒否で児童相談所に通うことになるが、プロによるカウンセリングというのは、「彼は元気になってますよ。その内学校にも行くようになるでしょう」なんて、あまり当てにはならないね。小児神経科に行っても、問診やMRI検査でも、特別脳に異常は見つからない。ただ、友だちとのケンカで、靴を燃やしたり、時計を指に巻いて何回も殴ったり、いつまでもシツコく陰湿だったようだ。この頃には動物殺しがエスカレートしてる。

14年間の少年Aの育ちや環境を読むと、けっこう自分と重なるところがあって、ヘンな気持ちになった。甘やかされて育ったことや、愛読書の一冊として、ヒトラーの「我が闘争」を挙げ、独裁者に興味があるとしてるが、俺もそうやがな!(書いてる途中、BSで独裁者の特集を見たが、スターリンってマジ、スゲ〜な!ヒトラーがまだカワイク見えるよ!)。なんで俺は犯罪者にならなかったのだろうか?

少年Aが逮捕されて、両親はドン底に落ちることになるが、意外と警察は、頻繁に来て守ってくれたり、覆面の、移動の為のクルマを用意してくれたり、調書を取るためかもしれないが、けっこう親身になって接してる。
ゲスなのは、やはりマスコミだ。仕方ないかもしれないが、少年Aに繋がりのあるところには、夜中だろうが、何だろうが、お構いなくズケズケやって来る。で、大衆が興味を持ちそうだったら、憶測や推測で、確かめもせずに記事を書く。例えば、少年Aが母親と数本ビデオをレンタルするが、その中に一本だけホラー映画があれば、「異常なホラーを好んで観てた」なんて、ヘーキで書くのだ。

両親は、「あの子が本当にこんな大それたことをやったのか?信じられない」と息子を信じるあまり、被害者への謝罪が遅れてしまったことが、世間の心象をも悪くしたようだ。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。