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「愛しのタチアナ」

ステキな傑作短編を2本観たよ。フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の映画だ。ジム・ジャームッシュの映画みたいと思ってたら、やっぱり友達だって。

まずは、「愛しのタチアナ(Take Care of YourScarf,Tatiana)」。94年のモノクロ作品。

自宅で母親と裁縫の仕事をしてる大柄な中年男のバルト。好きなコーヒーが切れたことで母親にブチ切れて母親を倉庫に閉じ込めて、母親の金を持って家を出る。向かった先はクルマを修理に出してた工場。クルマを受け取ると、そこの修理工でウォッカ好きの中年男のレイノ(ロックンロール大好き)を横に乗せて行く当てのない旅に出る。途中入ったレストランで出稼ぎ労働を終えたエストニア人とロシア人の2人の女(中年?)に逆ナンされる。「港まで乗せてってよ」ということで、4人は港に向かって出発する…。

中年男2人は女2人が乗ったことで、恥ずかしいのか急に無口になる。←童貞かよっ!(笑)。
クルマの中でも、外でもほとんど何も喋らない。黙々とコーヒーを、ウォッカを飲んでいる。

それでも、泊まるホテルの料金も、食堂の支払いも男2人で先に済ませる。ホテルはシングル2つを取るが、それぞれ女と同室でも何もしないし、同様、ほとんど喋らない。

唯一、レイノが、エストニア人の女の横に座って肩に手を回すぐらいだ。それも女の顔を見ることもなく恥ずかしそうにだ。ラブシーンと言えるかどうか(笑)。

全ての支払いをしてた男たちは金が尽きてくる。港に着いて、女2人がピザ一切れ(4つに分ける 笑)と紅茶をご馳走する。ここでお別れのシーンだが、「お前、外国に行ったことあるか」「いや、ねえ」ということで、男2人も船に乗り込んでしまう。

船内で女たちと再会し、また無言でタバコに火を付けてあげる。船を下りて、駅でロシア人の女を見送ると(バルトはお礼にコーヒーミルを貰う)、次にエストニア人の女の家に行く。レイノは「俺は彼女と残る。ここに残って作家になる」と別れて、バルトは独り家路に着く。家に着くと、倉庫に閉じ込めた母親を出して、またコーヒーを飲みながらミシンに向かってる。

ほとんどのストーリーを書いちゃったけど、それだけ中年男2人にクスッとさせられ、派手なシーンは皆無だけど、目が離せなくて引き込まれ、ホノボノと気持ちが優しくなった、一時間程のとても良い映画だった。

ロッカーの革ジャンを着てリーゼントで決めたレイノが、ウォッカをチビチビやりながら、バルトに「世の中は厳しい。ロッカーは早死にする」とグチりながらも、無言で女の側にいる心情は、とてもよくわかるし、ニクくてたまらない。

大きな感情表現はなくて、ただ相手をジィッと見るだけで、セリフにも大きな間がある。BGMとしてロックンロールが流れているものの、派手なドラマチックな展開は一切ない。ストーリーは静かに進行している。

だからこそ登場人物の感情が手に取るようにわかる。身近な人間の感情を日常のように描く、人間賛美の物語だと思う。

続く。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。