【邦画】「肉体の門」
1964(昭和39)年の、鈴木清順監督の作品「肉体の門」。Amazonプライムにて。
同監督の映画は、前衛的な独特の“清順美学”と評価が高いこともあるけど、大島渚と同様、俺にはヘタクソに思えて、あまり好きではない。しかし、この映画は面白かった。
何度か映画化されているようだけど、終戦直後の東京を舞台に、運河沿いの廃墟ビルの地下で身を寄せて暮らすパンパン(売春婦)グループの女たちの生き様だ。
原作は、戦後初のベストセラー小説。
二重画面の手法を使ったり、セリフや言い回しが演劇みたいだったりするけど、アップで撮った汗が噴き出る肌、男と絡む時の興奮状態の表情、掟を破って仲間に鞭打たれる時の弾けた女体、シナを作って男を誘う完璧なラインの柔肌…やたらと肉体を強調しており、戦前・戦中と抑え付けられていた人間の肉体による真の解放を表現してるようだ。
「タダで男とは寝ない」が掟の一つであるパンパングループの元に、ケガを負った復員兵の若い男伊吹(宍戸錠)が転がり込んで来る。彼は進駐軍の物資を横流ししており、GIから襲撃を受けたのだ。
女たちは彼と生活を共にするようになるが、彼の肉体と尊大な態度に男らしさを見て、惹かれるようになり、徐々に嫉妬、グループの結束に亀裂が…。
まず、外の男を愛した戦争未亡人を裸にして吊るし、次に伊吹と寝た18歳のマヤも同様のリンチを加えられる。真っ裸で吊るされて鞭打たれるけど、上手く、肝心なところは見えないようにしている(笑)。
けど、伊吹と寝て、初めて、仕事では得られなかった女の喜びを感じるシーンなど、めっちゃエロチックだ。演じたのは野川由美子。
戦後、全てを失い、価値観が大きく変わり、生きるか死ぬかが重くのしかかる日常において、自分なりの秩序を保って、逞しく生き抜く、肉体を強調した若い男女の歩み。
伊吹が行商から盗んだ牛を廃墟で解体して食べるシーンも象徴的に使われ、エロス溢れる肉体を示してる。
パンツ丸見えで警察に引っ張られる、パンスケが一列になってスカートをまくってGIに尻を見せる、黒人の神父がマヤを助けようと説教していたら、逆にマヤが神父を誘って寝る、日の丸と一緒に女の太腿が映る、労働歌インターナショナルを歌う…まさに“清順美学”による反逆の人間讃歌だな。