「石牟礼道子対談集」

以前、熊本出身の作家、石牟礼道子氏(2018年90歳没)の「苦海浄土ーわが水俣病」は読んだ。

言葉に表された、水俣病という“奇病”に侵された人間の呪詛の叫びは凄まじくて、確かに、俺の魂を激しく揺さぶったと思う。

この対談集でも、石牟礼氏は、生命の根源と死、日常と非日常、現実と非現実に対して、どのように言葉で向き合っていくかの苦悩を吐露している。

水俣の海の痛みと水俣病患者の魂の痛み…そこにどこまで言葉で迫れるか。

実際に、現場で患者たちや企業側の人間と接して闘う中で、言葉が、地にしっかりと根を下ろした個々の人間の感情を超えることができるのだろうか。言葉が簡素で単純化された現代だからこそ、その意義を問うことに大きな意味があるのだと思う。

人間が自然と、自然の一部となって共存する中で、有機水銀という人工の化合物が入り込み、大きな厄災をもたらした。これは人間の文明とその今後を考える上で、人間は人工物とどのように整合性を取っていくべきかを示す最初の大きな事案となったのが公害・水俣病であったと思う。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。