「天皇家の歴史・上」

学生時代に持ってたけど、こんなに文字が小さかったっけ?

懐かしの三一書房からの上下巻。メルカリで格安ゲット。まずは上巻から。

反体制社会主義運動に参加して、治安維持法でも検挙された経験がある著者だから、当然、反天皇的立場だけど、イデオロギーが見え隠れしても、古代の文献から真実の歴史を探る作業はとても興味深い。

古事記・日本書紀に書かれてる最初の天皇は、年代や年齢に矛盾が多くて、伝説・伝承・神話の域を出てない。江戸時代の文献でも指摘されている。当時の「記紀」の著者たちは、歴史を整えるために、相当の無理をして話を作り上げたのだろうと思われる。

421年に「倭国の王が、中国の宋王朝に服従して、その王の名は履仲天皇である」と中国の正史にあるが、これが対外的に文献に現れた天皇の最初だという。

ということは、その前に、九州地区にいた倭軍が半島の新羅を攻めてるから、これは天皇の軍隊であろうと。この当時から、天皇は度々半島を攻めて戦争を行なっていた。つまり天皇家の起源は戦争に終始しているということだ。

天皇家が大和から九州まで広い範囲を征服した時代は、4世紀中頃以前の数十年間で、それ以前、後に天皇家に成長する小豪族が、大和に存在してたのは3世紀後半からで、天皇の起源は現在から1600年程前ということになるそうだ。

「記紀」を見ると、天皇の歴史は、権力争い、帝位争い、女を巡る争いだらけで、これでもかと殺し合ったりしてるが、著者は、神として後世に作られた天皇を批判する意味で書いてると思われるが、俺は、天皇の人間らしさが素直にラジカルに出た結果だと思って、天皇も神なんぞではなく、色と欲の塊である人間である以上、当然のことだと興味深く読めた。

一応、天皇家が権力を集中させ、自分らの考えに反対する者は容赦なく殺したりしてるが、農民、百姓、豪族、武士らによる反乱、一揆、ストライキはしょっちゅう起こっており、絶対的地位を固めていたわけではないようだ。

それに、記紀他に書かれた天皇家の歴史は後世の作り話が実に多い。

仏教を国教とし、天皇皇后も深く仏教を信仰したのには驚いた。弓削神社の男根信仰の由来となった道鏡の巨根に惚れ込んだ女帝のことも出てきて笑っちまったね。

源頼朝による鎌倉幕府の樹立で、約800年続いた天皇国家が崩壊するまで。

いや〜、実に読み応えのある新書だった。次は下巻。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。