【邦画】「赤線地帯」

溝口健二監督の、1956(昭和31)年公開の、最後の作品で遺作となった「赤線地帯」。YouTubeにて。

戦後の赤線(売春公認地域)で働く女たちの物語で、なんともやるせない哀しい話だった。

東京・吉原の店(今のソープランドみたいなところ)「夢の里」を舞台に、売春防止法案が国会で審議されている時代、娼婦たちの生き様を生々しく描く。

いろんな事情で虐げられる女を描くのは溝口監督の得意とするところ。

明確な主役がなくて、息子との同居を望む年増のおばさんから、病気の旦那と子供を支える女、家を飛び出した不良娘、普通の主婦に憧れる女、客を騙して金を集めるヤリ手のしたたかな女、田舎から売られて来た少女…まで、娼婦たちがそれぞれ事情を抱えながら、男に身体を売って、ギリギリのところで生きている。

「夢の里」のオーナーの旦那は、国会で売春防止法案が一回流れて、「法案が可決されたら皆、投獄されてしまう。この店は、行き場のない女たちを救い、社会に貢献する慈善事業やのに」と説明する。

若尾文子(めっちゃカワイイ)演じるヤリ手の女だけは、騙した客に殺されかけるけど、金貸しもやって、貯金を増やして、貸布団屋を開業して娼婦から足を洗う。

他は、発狂したり、ドン底の生活を続けたり、迎えに来た親と仲違いしたり、夫婦生活が破綻したり、悲惨な状況になりながらも毎夜、「遊んでいってよ〜」と男に声をかける。

若尾文子から京マチ子、木暮実千代、三益愛子、浦辺粂子など、当時の名だたる女優陣が揃って、社会と男のために犠牲を強いられる女性の姿をそれぞれ熱演しており、完成度は高いと思う。

ただ、黛敏郎のBGMが、特撮で化け物でも出そうな不気味な音楽で、ちょっと合わないんじゃ。

責任がある大人の女性が、自分の性をどう扱おうが、例え売ろうとも、それは個人の自由であると俺は思うがね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。