【映画】「オマールの壁」

政治に翻弄される人間を描いた素晴らしいパレスチナ産の映画を観た。ハニ・アブ・アサド監督の「オマールの壁」(2013)だ。やっぱり数々の賞を受けてノミネートもされてる。

イスラエルに占領されるパレスチナ自治区での物語。
イスラエル軍と戦うために武器を調達し、幼馴染みのタレク、アムジャドと共に日々、武闘訓練に励む青年オマール。
そして、彼はタレクの妹、高校生のナディアと相思相愛の関係にあった。いずれは結婚を誓い合って、パン屋で働き稼ぎを貯めてた。
ある日、オマールはイスラエル兵に侮辱を受けて、タレクやアムジャドらと共にイスラエル兵を襲う。
後日、イスラエルの秘密警察に捕まってしまった彼は、捜査官ラミの策略で90年もの懲役刑を宣告される。恋人ナディアも捕まるかもしれないと脅迫されて、スパイになるように取り引きを持ちかけられる。
オマールはとりあえず取り引きを呑んで釈放される。
地元に帰れば、仲間達の間で裏切り者がいるとの情報が出回り、皆、疑心暗鬼になってる。
捜査官ラミの口添えもあって、恋人ナディアとアムジャドの間で裏切りの禁断の関係があって、ナディアは妊娠してることをアムジャドに告げられる。それを理由にラミにスパイになるように脅されたとも。
怒ったオマールとアムジャド、裏切り者が許せないタレクの3人は激しく揉め合うが、銃の暴発でタレクは死んでしまう。
オマールは、アムジャドの子を身籠ってるならと、アムジャドにナディアとの結婚を勧める。
数年後、アムジャドの家を訪れたオマールは、ナディアの話で、当時、彼女は妊娠などしておらず、アムジャドがナディアと結婚したいがために嘘を付いてたことを知る。オマールが捕まったのもアムジャドが秘密警察に喋ったためだった。
オマールは、今も彼の行動を探る捜査官ラミに、以前、イスラエル兵を襲った真犯人を教えるのと引き換えに銃をくれと頼む。
ラミから銃を得たオマールは、撃ち方を教えてくれと油断させて、幼馴染み同士の仲を引き裂くきっかけとなったラミを撃ち抜いた…。

最後、衝撃の展開でビックリしたが、仲の良かった幼馴染みも自分の国と政治の状況に、こんなにも振り回されてしまうのか。闘いが日常の世界は、平和ボケ(良い意味で)した俺には本質的にはわからないだろうな。

またイスラエルも分断するために卑劣な手を使うものだ。ナチスの迫害の経験がこうさせたのか。

イスラエルの占領政策ももう深く歴史的事実になっているために、解放を叫ぶ若者もハッキリと目指すものがわからなくなっているのだろう。

結局、嘘を信じてナディアと結ばれなかったオマールの悲劇は胸を打つ。幼馴染みも同志も皆、嘘に翻弄されたのだ。観てる俺さえも。

オマールは純粋だったからこそ、誰よりも一番、心を傷付けられたのだ。最後に、ブチ切れて捜査官ラミを撃ち殺すしかできなかったのだ。自暴自棄の自殺のように。

とても衝撃的な悲しい人間ドラマだった。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。