【古典洋画】「黒水仙」

1947年公開のイギリス映画「黒水仙(Black Narcissus))」(マイケル・パウエル& エメリック・プレスバーガー監督)。Amazonプライムにて。

日本は戦後の混乱期だけど、こんなに自然がキレイに写るテクニカル・カラーの、しかも狂気の映画が作られてたなんて。

英国教会から、5人の修道女が植民地であったヒラヤマの山地の村の教会に派遣されて来る。
修道女のリーダーは、大失恋から修道女になった、清楚な透き通る美しさを持ったデボラ・カー演じるシスター・クローダー。
彼女は4人の修道女を取りまとめ、なんとか教会を軌道に乗せようと奮闘するが、ズケズケと入り込んで来る現地の男をはじめ、現地人の慣習、しきたり、文化等、諸々の違いに苦労を強いられる。
修道女の1人、シスター・ルースが優しくされたことをキッカケに現地の男に片思い、しかし、彼はなかなか振り向いてくれずに、そのうち、彼が振り向かないのはシスター・クローダーが誘惑してるからと勝手に嫉妬に狂い、シスター・クローダーを殺そうとする…。

なんといっても、シスター・ルースが、デボラ・カー憎しと、彼女が現地の男と話をしてるところを、陰から、殺してやると睨みつけてる構図の怖いことったら。

神に仕える身としてストイックを信条にしている修道女だが、慣れない僻地ということもあって、真の女の感情や肉欲が表に出て来るのだ。現地人の若い女や領主の王子たちの欲のままに生きる姿勢にも感化されてしまう。

耶蘇教布教のためとはいえ、自分の健康な愛情や肉欲をも否定せざるを得ないなんて、考えれば一体何のために宗教ってあるの?それで人々が幸せになるなんて思えないけどね。たいていの場合、人々に軋轢と争い、排外を授けるものこそ宗教、特に耶蘇教だ。

ヒンズー教(多分)の聖者も出て来るが、シスター・クローダーは「そこに座ってると邪魔だ」と帝国主義的に言うしね。彼女は、恋人を愛したことを、神を愛することに乗り換えただけぢゃねえのか。

結局、シスター・クローダーを殺そうとしたシスター・ルースが誤って崖から落ちて死んでしまう。これをキッカケにシスター達の僻地の教会での生活は終了、彼女らは失意の中、村を去る。

修道女の情念劇はなかなか面白かった。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。