「現代怪談考」

著者は「クレイジージャーニー」に出てた人だった。確か、“隠れキリシタン”の取材をしたんじゃなかったかなぁ。

全国各地に散発する近現代の怪談話を考察した本。

有名な「口裂け女」から「カシマさん」「人面犬」「子殺し」「人さらい」「下半身が欠損した女」「テケテケ」「八尺様」「MONO」「ポルターガイスト」「樹海村」…etc。

その時代に合わせて、実に様々な怪談話があるものだが、姿・形を変えながらも多くに共通するのは、「赤い(服の大きな)女」の出現である。最近では、「小さいオジサン」ってのもあるが。(←ヤンキー文化の一つであることも共通してるな)

どんなに有り得ない非科学的なものであっても、時代に合わせて次々と怪談が産まれるのは、人間の悪、不安、恐怖という負の感情、そのものを体現してるからだ。誰しも持つ負の感情が、あらゆる縛りを破って自由に出て来てる証拠だと思うね。

高度に発達した管理社会の中にいて、せめて、そういう感情だけは管理なしで自由に飛び回らせてくれよーという人間の心の叫びだ、きっと。だから一概にオカルトだと非難はできない面がある。コレは一種の文化だから。

「口裂け女」にしても突然、出現したのではなくて、70年代初頭から地方都市の限られた狭い範囲で語られたりしてる。怪談話にも、ちゃんと系譜があるのだ。

70年代までの、明治、大正、昭和の怪談の流れを辿ると、「子殺し」が重要なテーマとして浮かび上がるという。子殺しを真に恐れて憎しむからこそ、その母親が、どんな事情があるにせよ、赤い女として登場するのだ。

コインロッカーベイビーと呼ばれた、赤ちゃんを捨てる事件が続発した頃から、母親は子供を大切に育てるものというモラルが盛んに言われるようになって、その裏返しとして子殺しの母親が赤い女となって語られるようになったのだ。

よく言われた口裂け女は教育ママの投影とはまた違うものである。やっぱり怪談には社会の不安が投影されてるとも言えるね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。