【洋画】「TOVE/トーベ」

ということで、2020年の映画「TOVE/トーベ」(フィンランド・スウェーデン、ザイダ・バリルート監督)を。Amazonプライムにて。

「ムーミン」の生みの親トーベ・ヤンソン女史の伝記映画だ。

トーベの私生活なのだが、タバコスパスパ、アル中みたいにガバガバ酒を呑み、かなり年上の、議員をやってる男の不倫相手となって愛欲の日々、自分の性癖に開眼して、背の高い男っぽい舞台演出家の女性と出会い激しい恋に落ちてまた愛欲の日々、その女性が身体だけの関係で他の女に走ると嫉妬に狂い、およそ「ムーミン」の世界とは大きくかけ離れた情念と性欲の日常で、けっこう面白かったのだ。

著名な彫刻家でアートにうるさく「ムーミン」なんて絶対に認めない厳格な父親との軋轢や、彼を中心とするフィンランドの保守的なアート・シーンにいることの葛藤とまた乖離の中で、なかなか自分が描く絵画が認められなくて売れないという満たされない現実がトーベの背景にはあったのだ。酒と性に溺れるのも仕方がないだろう。

芸術家にとって、非日常的な不幸な出来事は、クリエイティブの源泉となるのだろうか。

それでも、イタズラ書きみたいに描いた、「ムーミン」の世界が、舞台演出家の女性の目に止まり、注目を浴びることになるのだ。

例えば、大悪人が人々を感動させる物語を書くように、トーベは、自堕落な日々の中で、情念と裏腹の、精神の純粋性だけはさらに育み続けたに違いない。だから、構えて、素晴らしい絵を描こうとしても、見る人の心を打たずに、ふとイタズラ書きのようにノートに描いた「ムーミン」の世界が心を打ったものと思われる。

「ムーミン」の世界のキャラクターのモデルはトーベの身近な人々といわれるが、そう思われる人物もちゃんと描いている。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。