「啄木日記を読む」

女遊びに狂って借金まみれの、愛すべきデコッパチ、啄木ちゃんの日記の解説本。

たった26歳2ヶ月で早逝しちまった啄木ちゃんの評価の高い日記だけど、彼に限らずに著名人の日記を読むことの魅力は、日記は本音をそのまま書いていることが多いので、苦悩や絶望に共感したり、何かを発見したり、自分と同じ視点があって身近に感じたりすることにある。

啄木ちゃんは、「何となく不愉快な朝、誰かと思ふ存分喧嘩してみたいと思った」、詩歌でも「どんよりと くもれる空を見てゐしに 人を殺したくなりにけるかな」などと書きながら、故郷の自然に癒されるということを何度も何度も繰り返し書いている。

そして、最初の上京に失敗し、“赤貧洗うが如し”の生活の中で、当然の如く、社会主義に傾倒、大逆事件にも興味を持って、クロポトキンや幸徳秋水の著書を読んで感動したりもしている。

啄木ちゃんは、保守的になったものにはマイナスを、これから進歩するものにはプラスのイメージを持ち、それに与してゆかなければならないと考えたようだ。

しかし、「誰か知らぬまに殺してくれぬであろうか!寝てる間に!」と書くくらいに絶望的な心境に陥っているわけだから、社会主義やフェミニズム(女遊びが好きな啄木ちゃんは共感している)の前に、ストイックに自分の生活を建て直すことをやった方が良かったのでは、と思うよね。

そんな若い啄木ちゃんの日記だけど、ドナルド・キーン氏が「ひたすら真実を語る」と大きな評価をしてるように、閉ざされた状況内で自由を模索する青年の苦悩が素直に表れていて、やっぱり面白い。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。