【世界最大級OTA】エクスペディアの新戦略について考える
旅行業界に従事する人なら誰もがチェックしている(はず!)、
観光産業ニュース読者数No1を謳うトラベルボイスで先日、
注目の記事が発表されました。
エクスペディアとはアメリカで創業された世界最大級のOTA(オンライン・トラベル・エージェント)で、日本には2006年に進出。日本の旅行業界にとって、文字通り江戸時代末期の黒船的存在で、格安パッケージツアーが主流となっていたビジネスモデルの転換のきっかけを作りました。
ホテル予約から始まり、後に航空券販売、そして航空券+ホテルと販売の裾野を拡げ、順調に日本市場はおろか、世界市場を席捲してきましたが、
先日、新戦略を発表しました。
トラベルボイスの記事から要点を掻い摘まむと、
●デジタル総合旅行会社としての地位の確立。
●従来展開してきた航空券+ホテル(宿泊施設)のセット販売に加え、
タビナカ(現地アクテビティ)を包括した体験型パッケージを新たに創出。
●タビマエからタビアトまでのサポートを充実させる施策の1つとして、
「ヴァーチャルエージェント」の実装。
●エクスペディア会員は全て「エクスペディア会員プログラム」に統合(CRM統合)
※日本市場は今後数か月以内に上記サービス提供の開始予定。
「お客様にとって、最高の旅のパートナーになること」を目標にし、
巨額の費用を投じて、顧客目線のリブランドを図ろうとしている記事ですが、視点を変えると別の思惑も見えてきます。
OTAのビジネスモデルと言うのは、「マーケティングと仕入れを両輪で回していく」もので、日本の旅行会社が重きを置いてきた「企画力」は介在の余地がありません。
マーケティングにコストをかければ、顧客も増え、市場シェア増していきます。
そうなれば、ますます航空会社や宿泊業者への仕入れ・交渉力も増し、他社に比べ優位性のあるNET(裸原価)をもらえる事になります。
それがまた顧客の獲得に繋がり、認知が高まれば、余計なマーケティング(広告)費用もかけずに、「検索」「アプリ登録からのプッシュ配信」等で顧客を増や事が可能となります。
マーケティングが仕入れを良くし、仕入れがマーケティング(広告)費用を下げる好循環サイクルを築き上げる事ができるのです。
しかし、盤石と見られたOTAの収益構造も陰りが見えてきます。
その要因として、航空会社や宿泊業者のさらなる直販化や世界最大の検索サイトGoogleの検索ロジック(アルゴリズム)の変更が挙げられます。
一例として、Googleトラベルの無料開放の記事のリンクを貼ります。
上記、記事からも世界最大の検索サイトはOTAの上位表示を推奨していない向きがあります。
これによりホテルは自社サイトにしかない料金プランを出し始め、会員システムを整備し、D2C(お客様へのダイレクトなコミニュケーション)に舵を切る可能性もありますし、航空会社はその流れがさらに顕著で旅行会社に支払うコミッションもほぼ無いのが現状です。
また、時価総額という視点に置き換えてみると、
No1はエアビーアンドビー(airbnb)で約10兆円以上(2021年4月現在)で、対するエクスペディアは約2兆円で、実に5倍以上の差が開いています。
市場はエアビーアンドビーの成長性に期待をしています。
世界の旅行市場において、そのシェア争いはさらに激化し、
さらなるマーケティング費用を投下していかなくてはいけない状況下もしれません。
エクスペディアと言えども、安穏としていられる状況ではないのです。
CRM統合をさらに推進し、航空券と宿泊施設のみならず、現地アクテビティも含めワンストップで予約を可能としていく事(=面倒を取り除く事)も、
単品販売を主とした航空会社やホテルとの差別化にもなります。
また、オンラインチヤット(ヴァーチャルエージェント)によるサポート体制の充実も、今後の生き残りを見据えた上での大きな取り組みとも見て取れます。
日本でのサービスインは当面は先の様ですが、その動向から目が離せません。
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