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へっぽこ女子が普通自動二輪免許を取得するまでの話

普通自動車の免許証を取ってから数日後。私は腕に大きなヘルメットとバイク用のグローブを抱えて、再びお世話になった教習所を訪れた。大型二輪の免許を所持しているバイク大好きな父親となぜかバイクの中免を持っている母の元に生まれた私は、家族に背中を押されて普通自動二輪教習に通うことになったのだが、バイク教習生活は想像以上にハプニングの連続で、同時に不可能に挑戦し続けることの楽しさを改めて実感した。今日はそんな私がしばらく書き溜めていたバイク教習通学日記をみなさんにお届けしようと思う。

【序編】そうだ、バイクに乗ろう。

では、改めて私の基本情報から。私は現在19歳で、この春普通車(AT)の免許を取ったばかり。特別アウトドアな趣味を持っているわけでもなく、身長も160cmより少し高いくらい。バイク乗りのイメージとは正反対とよく言われる私が教習所に通い始めたきっかけは主に3つある。ひとつ目は、冒頭でも話した家族の影響。ふたつ目は、日本にいる間バイトの通勤に小型のバイクを使いたかったこと。そして最後に、家にある250CCのバイクにも乗りたかったからだ。

最初は小型限定免許を検討したものの、結局最後はバイク乗りの両親に普通自動二輪(MT)の免許を取ることを勧められた。そして、今後数年間はバイク大国の台湾で暮らす予定があることも大きな決め手となった。あとは、普通車教習で通学をしていたとき、バイク教習をする教習生さんの姿に憧れたこともある。そんなたくさんの事情を抱えた私は早速教習所に通い始めたのだった。

【1段階編】へっぽこ女子の挑戦

緊張でガクガクしながら受けた初回の教習。マニュアル車が初めてでバイクの基礎知識も曖昧な私は、とりあえず教官の後ろに乗せられてコースを走行。その後、基本操作の方法や取り回しを終えて、バイクの引き起こし。400CCのバイクを1人で引き起こすのは大変だったが、助けを借りてなんとか成功した。さらにその日の最後には外周コースを自分だけで走り、なんとか無事に初回授業を終えた。

その後、交差点や一本橋と呼ばれる教習課題もスムーズにクリア。一本橋の7秒以上走行を1発クリアし、遠くから見ていてくれた仲良し教官さんからも『センスいいね!』と言われてこれまた調子に乗って迎えた次の教習。私は、ついに心をズタボロにされたのだった。

次の教習課題はスラロームと呼ばれる、クネクネした道の走行。ここでパイロンに何度もぶつかり、さらにはギアチェンジが遅れて何度もエンストと立ちゴケをしてしまった。転倒するたびに『あ〜やっちゃった〜』とテンションが下がり、後ろに教習車が並んでいるときはもはや絶望。しかもその日は雨の日で、教習後半にはもう笑う気力すら残っていなかった。さらに、S字やクランクにも苦戦して、これまた何度も立ちゴケしてしまった。しかし、倒れたら立ち上がるしかない。その結果、この日の教習でついに200kgもあるバイクを1人で引き起こせるようになった。

その後の教習では、残りの教習課題である8の字や坂道発進などを重点的に練習し、何度か転ぶこともあったが無事に1段階の見極めまでたどり着くことができた。バイクの操作も以前よりスムーズになり、ようやくバイクが楽しくなってきたのもこの頃。見極めでは、新人二輪教官たちも私の教習に加わったので、私1人と教官3人という非常に気まずい空気感の中で行われたのだが、それに緊張してしまい教習課題を2連続で失敗。若干心が折れかけたものの、そこから気を取り直して、一本橋からスラロームにかけてを順調にクリア。途中でコースを間違えるというトンチンカンなことをしたが、無事に合格をもらった。

【番外編】AT教習が恐怖だった話

ここまで1段階の教習について書いてきたが、私が通っていた教習所では1段階の最後にオートマ車教習が組み込まれていた。いわゆる、ビッグスクーターと呼ばれる車種で、普通自動二輪(MT)の免許があれば乗ることができる。ギアチェンジがなく、ブレーキも手元での操作で完結するため、最初は余裕だなと思っていた。しかし、車体がとても大きくて動かすだけで大変。しかも小回りが効かず、スラロームやクランクが本当に難しかった。実は私、AT車の教習中に3回も派手に転んでしまい、それがトラウマになって『こわい、私これ乗れません!』と終始言い続けていた。その後、教官の後ろに乗ってコツを掴んだが、やはり恐怖心に打ち勝つことができずに終わった。

【2段階編】まだまだ続く教習

私の通っていた教習所では、2段階で3回シュミレーター教習というものが組み込まれていた。バイクには仮免許がないため、普通車のように教習で公道を走ることはできない。そのため、より実際の運転を想定した教習がここで行われる。1段階の時は、私と教官のマンツーマンで授業をすることが多かったが、2段階になってからは誰かと教習が一緒になることが基本だったので、シュミレーター教習も複数人教習として受けることがほとんどだった。教習内容としては、シュミレーター用バイクを使ってゲーム感覚で走行訓練をする。ただそれだけなのだが、普段ゲームをしない私にとっては本当に難しくて、バイク教習で最も苦しんだことのひとつでもある。

まずは1回目のシュミレーター教習。男の子の生徒さんと私、それから新人教官の3人で教習が始まった。妙な緊張感が流れてていたものの、見るからに普段からゲームをしていそうな男の子はシュミレーターの練習走行を難なくクリア。一方で、シュミレーターの操作に苦戦し続けた私は、練習走行でさえも散々な結果になってしまった。その様子を見ていた教官は『(苗字)さんはバイクに乗らない方がいいね』と遠回しに言ってきたが、それが本当に悔しくて内心はずっとモヤモヤ。その後続けて受けた実車教習では、やはりバイクに対する恐怖感が大きくなってしまい、場内でエンストばかりしてしまった。その日の教習後1人でクヨクヨしていると、教習所でバイトをしている友達が励ましてくれた。折れかけていた心を取り戻して、その次の週も再びシュミレーター教習に挑んだ。

シュミレーター教習の2時間目は、仲良しな教官さんとマンツーマンレッスン。前回の教習で恐怖心が大きくなってしまったことをたくさん聞いてもらった。すると心が軽くなって、シュミレーターの操作もびっくりするほど上達していた。実車教習でもマンツーマンだったので、2段階4時間目にして改めて基礎からしっかり練習をした。クラッチの繋ぎや短い距離でもしっかり速度を出すこと。さらに、この時間からは急制動の課題にも少しずつ慣れていく。この課題は、指定された距離の間でブレーキをかけてバイクを停車させなければいけない。時速40キロを事前に出しておく必要があるからこそ、めちゃくちゃ恐怖心を煽ってくるのが特徴だ。『(苗字)さんなら絶対できるよ』とニコニコしながら励ましてくれる教官に元気をもらいながら、何度もトライアンドエラーを繰り返した。その時間内に課題を成功させることはできなかったが、次の教習でようやく合格をもらった。いいじゃん、この調子。

最後のシュミレーター教習と学科教習(危険予測)を終えて、2段階もいよいよ見極めを迎えた。一本橋やクランクも滅多に脱輪することなく、スラロームもいいタイムで走れている。たくさん練習した急制動も成功率がどんどん上がっていた。多少コースを間違えてしまった部分もあったが(道覚えの悪い私は二輪教習界隈で方向音痴ちゃんと呼ばれ続けていた)、見事見極めをクリア。ここまで追加補習なし。とりあえずよく頑張った。

【卒業検定編】結果はいかに

迎えた卒業検定当日。天気は快晴でバイク日和だった。この日に自動二輪の卒検を受けたのは私1人だけだったので、個別で丁寧に説明を受けてから試験本番が始まった。検定員さんに『急制動で時速45キロ以上絶対出すなよ』と言われたものの、緊張しすぎて速度メーターを無視していた私は、どうやら急制動の箇所に時速45キロで突っ込んでいたらしい。検定員さんは見ていてヒヤヒヤしたと言っていたが、急制動は見事に大成功。途中で急に車線変更をしてきた教習中の普通車に衝突しそうになるアクシデントがあったが、そこで動揺せずに冷静な気持ちのまま教習課題を順調にクリア。脱輪や転倒もなく、無事に検定を終えた。

検定員さんからは総評として『スピードのメリハリが素晴らしい』『操作もスムーズで安定していた』と言ってもらえたので、嬉しさと達成感でいっぱいになった。その場で『たぶん結果大丈夫だよ』と言ってもらえたが、その後正式に発表された結果も見事に合格。オートマ車しか乗ったことのない19歳女子でもストレートでバイク中免を取ることに成功した。これで私もバイク女子への一歩を踏み出せる。兄貴感の強い仲良しな教官さんや教習中に出会った同世代の生徒さんたち。本当に楽しい人たちに囲まれていたので少し名残惜しかったが、余韻に浸る間もなく、私は教習所を飛び出して免許センターに駆け込んだ。

ギリギリの時間で免許センターに到着し、ついに免許の種類欄に『普自二』が追加され、免許証の色も初心運転者の証である緑色から一般運転者の青色に変更された。GW前に取れたことが本当に良かった。初心者ライダーとして週末から公道デビューをするつもりだが、安全第一でバイクライフを楽しもうと思う。『いつかは自分のバイクがほしいな、バイク仲間も増やしたいな』なんて思いながら今日の記事を終わりにする。

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