直感(Gut Feelings)ってどんなもの? 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著
今回は、今までの行動経済学のシステム1、システム2の話があった中で、「システム1に支配されてはうまくいかない」という話が主なトピックでした。しかし、必ずしも「システム2」を使えばうまくいく、というわけでもないことがわかっています。今回から、そんな「直感」の役割にフォーカスした、ゲルト・ギーゲレンツァー著 小松淳子訳『なぜ直感のほうが上手くいくのか? ー「無意識の知性」が決めている』をご紹介します。
直感とそれに似たことば
「直感」と似たことば、「直観」と「勘」は実際にそれぞれの切れ目も難しく、「直観」画数も多く「観察」の「観」が入っているからなんとなく「直感」よりも「直観」の方が偉そうに見えます。それではそれぞれの意味を見ていきましょう。
辞書の意味
まず、それぞれの辞書で見る意味を見てみましょう。
「三省堂国語辞典 第七版」を引くと下記のようになっています。
直感
説明をぬきにして、感じでわかること。ぴんとくること。
直観
目の前にあるものについて、直接見てわかること。
勘
直感的にさとる、心のはたらき。第六感。
こういうふうに見ると、直感と勘は同じような意味であるのに対して直観は「見る」という意味が入っています。
では、それぞれどんな使われ方をしているのか調べてみましょう。
コーパスで調べる
コーパスとは、言葉のデータベースです。どんな使われ方をしているか、どんな文脈で出てくるかを調べるのに大変便利です。国立国語研究所が提供している日本語コーパス、KOTONOHA「少納言」を使って調べてみました。
現代日本語書き言葉均衡コーパスを使って調べたところそれぞれ下記のような使われ方をしています。
直感:664件
直感は当たる、直感を信じる、直感力、直感的に
など、無思考で即座の判断を意味する。
直観:456件
直観的思考力、直観された
など、ありのままを見るという意味が多い。
勘:5636件
勘は名前などでもでてきたり、熟語でも活用されるため単体だけではないものの、使われる頻度が高く、より一般的なことば。
本の中での意味
では、この本の中では、どのような意味として使われているのでしょうか?それぞれ英語に紐付いた形で翻訳がされていて、それぞれの意味もついています。
直感:Gut Feeling
一瞬で意識にのぼる判断。
直観:Intuition
基になっている理由が自分でもよくわからない判断
勘:Hunch
行動に移すに足る確固たる判断
という具合だ。
勘は「行動に移すに足る確固たる判断」ということで、こちらはぴーんとくるなどに近いかもしれない。「これなんだ!」と判断は既に固まっているようなものだ。
直観は「見てパッと判断するようなもの」であるがために、論理などは度外視しているため、「基になっている理由が自分でもわからない」ということだ。
直感は、自分の経験則に基づいて形作られた「ヒューリスティック」な判断。本当に信じてよいのか?ということが主題になる。
Gut Feeling、まさにシステム1の判断はどの程度信頼が置けるのかを様々なアプローチでこの本では紹介されていく。