![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121607831/rectangle_large_type_2_d4367609e1e1f57e9a2b7eb340616900.jpeg?width=1200)
僕のペナントライフ・第4幕・ARE(アレ)の章〜⑪〜
9月13日(水)
マジック5で週明けのジャイアンツ三連戦に突入した我がチームは、さらに白星を重ね続ける。
ただ、この三連戦で『アレ』を決めてしまわないと、次は、カープのお膝元であり、絶対的な強さを誇るマツダスタジアムでの連戦になる。
本拠地マツダスタジアムでの阪神胴上げ阻止は、カープナインと熱狂的なファンの大きなモチベーションになることは想像に難くないので、17日(日)のライブ・イベント当日と胴上げの日が重ならないように、是が非でも明日14日(木)に『アレ』を決めてもらいたい、と僕は祈っていた。
そのためには、このジャイアンツ三連戦の間に、我がチームが三連勝したうえで、マジック対象チームであるカープがスワローズ戦に2敗するか、我がチームが2勝以上したうえで、カープがスワローズに三連敗する、というなかなかに厳しい条件が課せられている。
それでも、カープが、今シーズン苦手としている神宮球場でスワローズと対戦するという日程も関係し、ここは、一気に『アレ』を決められるチャンスだと、僕は考えている。
その期待どおり、本拠地の大観衆の声援に後押しされたチームは、ジャイアンツに連勝。
この日の試合は、3回裏にヒットで出塁した近本と中野が、次々に盗塁を決めて、ジャイアンツの先発・横川凱を攻めると、相手ベンチは無失点にもかかわらず、投手交代を告げる。
「阪神ベンチは、横川投手のモーションのクセを見抜いていて、シーズン終盤のここまで伏せてたのかも知れませんね」
という阪神OB・関本賢太郎氏の解説が示すように、タイガースの首脳陣は、自信を持って、俊足の一・二番コンビに盗塁のサインを出しているように感じられた。
そして、一死満塁となったところで、9月絶好調の佐藤輝明が、僕と奈緒美さんが観戦した日以来の満塁ホームランをスタンドに放り込み、宿敵ジャイアンツに、格の違いを見せつけるように勝利を収めた。
さらに、甲子園の試合終了から30分後、神宮球場でカープが敗戦したことで、ついに、マジックは1になった。
【本日の試合結果】
阪神 対 巨人 22回戦 阪神 4ー0 巨人
両チーム無得点のまま迎えた3回裏、タイガースは一死満塁のチャンスで、9月絶好調の佐藤輝明が、5月以来となる今シーズン2本目の満塁弾をバックスクリーン右側に叩き込み一挙に4点を先制。
このリードを先発青柳晃洋、コルテン・ブルワー、桐敷拓馬、石井大智の四人の投手が無失点で守り、タイガースは破竹の10連勝。
神宮球場で行われたスワローズ戦でカープが敗れたため、タイガースの優勝へのマジックナンバーは、1となった。
◎9月13日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:77勝42敗 4引き分け 貯金35
順位:首位(2位と13ゲーム差) マジック1
※
9月14日(木)
待ちに待った、その日が、ついにやって来た――――――。
初めての『アレ』を目撃することになるかも知れないこの日、勤務シフトの関係で、学校への訪問がなく自宅勤務となっていたため、僕は、有給休暇を取得して、地域の盛り上がりぶりを確認することにした。
朝食を取ったあと、出かける準備の最中には、リッキー・マーティンの『The Cup Of Life』をリピート再生する。
この曲は、サッカー日本代表が初出場をはたした1998年ワールドカップ・フランス大会の公式テーマソングだったらしく、スポーツ中継などで良く耳にするけれど、サビの部分の
♪ Here we go! Ale,ale,ale!!
♪ Go,go,go! Ale,ale,ale!!
♪ Tonight's the night
♪ We're gonna celebrate
♪ The Cup Of Life! Ale,ale,ale!!
という歌詞が、今夜『アレ』を達成しようとする我がチームにとって、これ以上に相応しく、テンションを上げられる曲はないと考えたからだ。
「ヒア・ウィー・ゴー! アレ・アレ・アレ!! ゴー・ゴー・ゴー! アレ・アレ・アレ!!」
曲に合わせたコーラスを入れて気分を盛り上げた僕は、隣の市まで足を伸ばして、尼崎中央商店街で『マジック1』となったマジックボードをスマホで撮影する。
ひと月前のマジック点灯の翌日に来たときよりも、商店街の人通りが増えていて、みんな一様にマジックボードにスマホを向けている。テレビ局のカメラクルーも前回に比べて格段に数が多い。
四日前のカープ戦が終了してから、ファンとマスメディアの気運は、『アレ』へ向かって、一気に加速した。
この商店街がある尼崎市では、市当局から市民へ異例のお願いが発表された。
「プロ野球の阪神タイガースの優勝マジックナンバーが「3」となり、尼崎市民の阪神タイガースファンの皆様も、待ちきれない気持ちだと思います。
一方で、ムードが高まり、大勢の人が集まれば不測の事態が起こりかねません。
このため、市民の皆様におかれましては、ケガや事故の被害に遭わないように、また、他人に迷惑をかけてしまうことがないように、節度ある行動を取ることを心がけていただき、むやみに危険な行動を起こしたり、危険な場所に行かないようにお願いします。」
甲子園球場の地元、西宮市以上の警戒ぶりに地域性を感じ、阪神地域に住む人間としては、思わず苦笑してしまう。
他にも、ソーシャルメディアのX(旧Twitter)では、台湾の大阪領事館が、前日に告知を出している。
「【訴え】9月14日は心斎橋、道頓堀、通天閣、甲子園球場への外出は控えて下さい。
あす14日にも阪神タイガースの優勝決定があり、心斎橋周辺では突き飛ばし事故や刑事事件が発生する恐れがあり、大阪府警は警察官1500人を増員して警備にあたっている」
大阪領事館の告知どおり、18年ぶりの『アレ』に備えて、兵庫県警では600人、大阪府警では1500人以上の体制で、不測の事態に備えるという。
厳しい残暑のなか、その暑さ以上の熱気を感じながら、僕は、甲子園球場に向かった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?