Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想な…

Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想などいただけると嬉しいです。

最近の記事

吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑫

 お互いに相手に対して想っていること、感じていることを吐き出し終えたところで、そろそろ、本題に入ろうか、ということになった。  針太朗は、演劇部から借りていた台本を取り出し、あらためて、仁美に語りかける。 「アイちゃんは、『マイ・フェア・レディ』の下町の花売り娘には、上流階級の仲間入りをするという女子の願望を叶える部分があると思うけど、男子には、そういう感じの上昇志向みたいなモノがあるのかが、気になるって言ってたよね?」 「うん……男女の立場を逆転させるっていうのは、自

    • 吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑪

      「どういうこと? 私が、シンちゃんを狙うリリムだと思って、二人きりになることを避けようとしたんじゃないの?」  針太朗の言葉を疑問に思った仁美は、ストレートに質問をぶつける。  すると、彼は、ややバツが悪そうに、そして、少しだけ顔を紅潮させながら、一枚の写真をテーブルに置いた。 「この写真といっしょに、真中さんを信じるな、っていう意味のメモが入った封筒が届いたんだ」  彼が示した写真には、一年生の男子生徒・西高裕貴に微笑みかける真中仁美の姿が写されていた。 「ナニこれ

      • 吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑩

         生徒会長から提案されたと言うこともあり、学院に保管されている女子生徒用のブレザーとシャツを借りて、着替え終わった仁美を彼女の自宅に送っていくと、時刻は午後八時になろうとしていた。  駅から、彼女の自宅までの間のこと――――――。  ショッキングな出来事があったためか、口数の少ない仁美を気遣いつつ、針太朗は、週の前半に彼女から依頼されていた件について、切り出した。 「真中さん、今日は大変なことがあって、気持ちの整理がつかないかもだけど……演劇部のお芝居について、ボクなり

        • 吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑨

           屋上へ上がる、と言った針太朗たちを制して、生徒会長の東山奈緒と中年の男性警備員は、一年生の二人が居る裏庭の駐車場に降りてきた。   「怪しい修道服のオンナが、屋上で暴れているという通報があって、見に来たんだが……君たちは、なにか見なかったかい?」 「はい……ものすごい勢いで、裏庭の奥の森みたいな場所に逃げていきました」  針太朗は、屋上から声をかけてきた奈緒たちと会話を交わす間に視界の端でとらえたオノケリスと思われる四つ脚の獣が姿を消した木々の方を指差す。 「そうか、

        吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑫

        • 吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑪

        • 吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑩

        • 吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑨

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑧

           校舎屋上から、フワリと全身が放り出されると、針太朗の身体は、駐車場にもなっている裏庭に向かって、真っ逆さまになって落下を始める。  どこかから、 「シンちゃん!」 という大きな声が聞こえた気がした。  ただ、猛烈なスピードで地面が近づくことへの恐怖に耐えきれず、ギュッと目をつむる。 (あぁ……ここで、ボクの人生は終わるのか……)  そう覚悟して、身を縮めた瞬間――――――。  針太朗は、  ガクン――――――  という衝撃とともに足首がつかまれ、身体が宙に

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑧

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑦

           針太朗は、スマホに手を伸ばしたまま、意識が遠のいていくのを感じた。  伸ばした手の先の視界が徐々に暗くなっていく感覚に抗おうとしながら、彼は、ボンヤリと考える。 (ボクたちが、このままこの魔族にやられてしまったら、学院の反応はどうなるんだろう……?)  自分の頸部を圧迫して、窒息死させようとしている半身半獣の魔族は、自分たちの死を自殺に見せかける偽装工作を行っていたようだが、クラスメートで新しい友人でもある貴志と最後に連絡が取れたことで、自分たちの危機に、修道服姿の外

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑦

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑥

           「チッ!」   という舌打ちとともに、オノケリスは、獣と化した下半身の方に左腕を伸ばして、突き刺さった矢を引き抜くと、自らの身体を傷つけた矢尻を確認する。  彼女の下半身を貫いた矢は、弓道の競技にも使用されるもので、矢の先端部分にあたる矢尻は、先が尖っているものの、木製であるため、殺傷力が高いとは言えないモノだ。 「余計な邪魔をしやがって……と、言いたいところだが――――――こんな競技用のモノで対抗しようとうは、私もずいぶんと舐められたものだな……」  吐き捨てるよ

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑥

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑤

           その細い腕のどこに、これ程のエネルギーが秘められているのか針太朗にはわからなかったが、オノケリスは彼の首元にさしこんだ片手一本で、らくらくと男子生徒を持ち上げる。  地面から十センチほど浮き上がったままの態勢で、相手の姿に目を向けると、彼女の脚部がうごめき、修道服のロングスカートから覗く両脚には、獣の毛に混じって、黒い蹄のようなモノが見えた。  オノスケリス、という語が、古の言葉で「ロバの脚を持つ者」を意味するとおり、シスター・オノケリスの下半身は、いつの間にか、四つ脚

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑤

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜④

           もつれそうになる足で階段を駆け上がりながら、なんとか校舎の四階にたどり着いた針太朗は、演劇部の部室を目指す。  息をはずませながら、最後のチカラを振り絞って部室にたどり着いた彼は、呼吸も整わないまま、部室の扉を開ける――――――。  しかし、施錠されていない部室の部屋は、もぬけの殻だった。  ただ、開けっ放しの窓の手前では、カーテンがゆるい風を受けて、ヒラヒラと舞っている。  イヤな予感がした針太朗は、窓際に駆け寄り、恐る恐る窓から顔を出して階下を確認した。  幼稚

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜④

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜③

           針太朗が乗車した普通電車は、乗り換え駅から十分ほどで花屋敷駅に到着した。  彼が、駆け足で西側の改札口に急ぐと、見慣れた上級生の姿があった。 「奈緒さん! 来てくれて、ありがとうございます!」 「礼には及ばない。我が校の生徒の身に危険が及んでいると言うことだからな。それより、時間が惜しい。学院に急ごう。必要なことは、学院への道すがらに聞かせてくれ」  生徒会長の東山奈緒の言うとおり、修道服を着た外国人女性が、正門で入校受け付けを行っていたという目撃情報から、すでに十五

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜③

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜②

           北口駅を出発した普通電車の車内で、針太朗は、メッセージアプリを確認する。  希衣子に対して、質問攻めをしてきた外国人女性の目撃情報を集めるよう依頼していたことから、彼女が立ち上げていたグループLANEには、多くの情報が集まっていた。  さらに、放送メディア研究会二所属する乾貴志が、その雑多な情報を精査して、必要なものだけをピックアップして、針太朗に送信してくれている。  授業のない土曜日のため、当日の目撃情報は多くはなかったが、それでも、クラブ活動で学院に出入りしてい

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜②

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜①

           味夢古美術堂で、女性店主による魔族対策のレクチャーを受けた針本針太朗は、妖子から託された小瓶を受け取って、お礼の言葉を述べたあと、上級生に連絡を取ると、すぐに店を飛び出して、祝川駅を出発する電車に飛び乗った。  古美術堂の店舗からほど徒歩数分の場所にある私鉄沿線のこの駅から、針太朗たちが通う、ひばりヶ丘学院の最寄り駅である花屋敷駅までは、二度の乗り換えを経て、四十分ほど時間がかかる。  すでに大きく傾いている太陽は、学院に到着する頃には山の向こうに沈んで、西の空には三日

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜①

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜幕間③〜闇に蠢くモノ〜

           夕闇が迫る、ひばりヶ丘学院の校門前――――――。  休校日のため、生徒や学校関係者の人影がまばらな中、見慣れない服装の外国人女性が、警備室まで入校許可の手続きを行っている。  女性用の修道服をまとったその女は、入校者一覧の氏名の欄にミランダ・ジョヴォヴィッチ、所属組織に祝川教会と記入して、所定の手続きを終え、入校許可証を受け取った。  彼女が、任務の初回実行日をこの日に選んだのは、校内への人の出入りが少ないことと、ターゲットとなる女子生徒が頻繁に接触を図るようになった男

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜幕間③〜闇に蠢くモノ〜

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑮

           真剣な眼差しで問う男子高校生の視線を受け流しながら、古美術堂の店主は、うっすらと瞳を閉じながら、鷹揚な口調で問い返す。 「幽子ちゃんは、『リリムちゃんたちをあなた自身に惚れさせて魂を奪う気にさせない』ことを薦めたのよね?」 「はい……ボクは、女子と交際した経験どころか、会話することすら苦手なので、他の方法を教えてください、って言ったんですけど……」  針太朗が、そう答えると、妖子は、薄い笑みを浮かべて、ふたたび、問いかける。 「幽子ちゃんも、相変わらず説明不足ね……

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑮

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑭

          『ドグラ・マグラ』は、構想・執筆に十年以上の歳月をかけて書かれた探偵小説家・夢野久作の代表作とされる小説で、日本探偵小説の「三大奇書」に数えられている。  一度の読了では、作品の真相、内容を理解することは困難とされる一方、その複雑、狂気的、難解な内容、構成のために、途中で挫折する読者が多いといわれている。また「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」と謳われることも多く、実際に探偵小説の大家である横溝正史は、対談企画のために対談のために、本書を読み返して気分がヘン

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑭

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑬

           カフェを出て行く針太朗を見送りながら、希衣子は軽くため息をつく。 「あんな風に言われたら、協力するしかないじゃん……」  そう言いながら、スマホを操作し、友人をはじめ数多い知人に対して、メッセージアプリで一斉に情報送信を行う。  彼から依頼されたのは、彼女が遭遇し、質問攻めをしてきた外国人女性の目撃情報を集めることだった。 「これは、友だちや知り合いが多い、ケイコにしか頼めないことなんだ!」  熱を込めたその表情に、思わず彼女がうなずくと、針太朗は続けてこう言った。

          吸潔少女〜ディアボリック・ガールズ〜第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑬