Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想な…

Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想などいただけると嬉しいです。

最近の記事

初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑪

「ぼ、僕の話しなんて聞いてもつまらないぞ!?」  警戒するように、緑川は言葉を返す。 「3学期の終わりから、5月の間に二回も別の女子にフラレたオレの話しよりショボくれた話しなんて、あり得ねぇよ……それに、こうして、『三顧の礼』を尽くした仲だ。少しくらい、緑川のことを話してくれないか?」  自虐的な笑みを浮かべながら肩をすくめたあと、彼の部屋の蔵書である横山光輝の『三国志』の故事にならってうながすと、クラスメートは、覚悟を決めたようにうなずいた。 「わかったよ! だけど

    • 初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑩

       あらためて訪れた緑川武志の部屋を見渡すと、書斎と言っても良いほどの書棚の数と、その書棚に収まる本の数が目についた。小説やコミックのタイトルは、歴史モノが多いことに気がつく。また、判型を問わず、ライトノベルのタイトルも、いくつか確認できる。 「――――――で、僕に聞いてほしい話しってなんなだよ?」  オレに、学習机に備えつけの椅子にうながし、自身はベッドに腰掛けた緑川は、そう切り出してきた。 「昨日、置かせてもらったメモの動画を見てくれたのなら、だいたいのことはわかるだ

      • 初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑨

        「えっ!? なんの音だよ!?」  声を上げる緑川の反応に、オレは手応えを感じた。打ち合わせどおりなら、この音は広いバルコニーが発生源のハズだ。  ブンッ――――――‼  もう一度、音が鳴ると、籠城している部屋の中の緊張感が、こちらに伝わって来る。  さらに続けて、シャッ! というカーテンを開く音が聞こえると同時に、室内からは緑川武志の 「う、うわ〜〜〜〜〜!」 という、なんとも情けない声が聞こえてきた。   「な、なんだよ黒田! なんで、金属バットを持ったヤツが、バ

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑧

           緑川家への二度目の訪問を終え、シロと作戦会議を行ったあと、オレは野球部に所属する同級生に連絡を取った。二年生にして、チームの四番を任されている佐藤照明は、オレの頼みを快く引き受けてくれた。  オレのプランが計画どおり進むなら、引きこもってしまったクラスメートを自室から連れ出す「天岩戸プロジェクト」は、そろそろ、大きな転機を迎えるハズだ。  翌日、オレは担任教師への経過報告と、この日の活動予定を伝え終えると、シロと佐藤とともに、緑川家に向かうことにした。ユリちゃん先生には

        初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑪

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑩

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑨

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑧

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑦

           前の日と同じく、我が子のクラスメートを快く招き入れてくれた緑川母は、オレの目論見どおり、訪問者である女子が前日とは異なり、なおかつ、目を見張るような容姿の持ち主であったことに感激したようで、今日は、紅茶だけでなく、お茶うけの焼き菓子まで用意してくれた。 「あっ! アン◯・シャル・パンティエのフィナンシェ! これ、クロの大好物なんだよね」  シロが言ったように、緑川家のリビングで提供された焼き菓子は、『世界一売れているフィナンシェ』としてギネスブックに認定されている、我が

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑦

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑥

           緑川武志の自宅を訪れた翌日の放課後――――――。  職員室で、今回のクライアントである谷崎先生に、初日の経過報告と、この日の活動予定を伝えたあと、緑川本人に関することで、プライバシーに差し障らない程度の情報を得てから、前日と同じように、自転車で緑川宅に向かう。  今日のお宅訪問のパートナーは、クラス委員の紅野アザミではなく、新学期にウチのクラスに来たばかりの転入生である。  ただし、二日前の放課後、上機嫌で今回の件に協力を申し出た彼女は、すこぶるご機嫌ななめだった。

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑥

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑤

           コンコン――――――。  二階にある一室のドアがノックされる。 「武志くん、クラスのお友達が来てくれたわよ。あなたとお話ししたいって言ってるから、ここを開けてくれない?」 「友達? 誰だよ!?」  室内からは、鋭い声が返ってきた。なかば予想どおりの反応に、オレは、緑川の母親に、 (ここは、自分たちに任せてください) と、ジェスチャーを送る。  すると、中年女性は、オレと紅野に何度も頭を下げ、リビングのある階下に降りて行った。  緑川の母の姿が見えなくなったことを

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑤

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜④

           担任の谷崎先生から、新学期から登校していないクラスメートの対応を任された翌日、オレは、クラス委員のパートナーである紅野アザミとともに、その生徒の自宅に向かう。  オレと紅野が対応を一任された生徒、緑川武志が住む家は、オレたちが通う高校から徒歩で30分ほどの場所にあった。ユリちゃん先生から聞いていた住所をGoogleマップで確認すると、自転車なら所要時間12分となっている。  さすがに、学校から往復1時間の距離を徒歩で行くことは避けたかったので、紅野と二人、自転車で彼の家

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜④

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜③

          「転入してきて、まだ、ひと月と少しなのに……白草さんがクラスメート思いで、先生は嬉しいわ! 良いでしょう。ぜひ、緑川くんの登校に協力してもらって! ただし……わかっていると思うけど、デリケートな問題だから、他のクラスの子たちには、口外禁止よ?」  念押しをしてくる担任教師に、「はい、もちろんです」と、即答したオレは、職員室を退室して、傍若無人なクラスメートに、ユリちゃん先生の返答と今回の依頼内容を報告する。 「そっか……いつも、空席だったあの席は、その緑川クンって男子の席

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜③

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜②

          「断りづらくて、引き受けちまったけど……さて、どうする――――――?」  相談室を退室したあと、オレは、クラス委員のパートナーに問いかける。 「どうしよう……? やっぱり、緑川くんのお家に行ってみるしかないのかな?」 「だな……それを見越して、ユリちゃんも、オレたちに緑川の家の住所を教えたんだろうし……」  クラスメート宅の住所という超個人情報を知らされたからには、クラス委員として、何もしないわけにはいかない。オレだけでなく、責任感の強い紅野も同じように考えるだろう。

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜②

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜①

           5月のゴールデンウィークを終えた翌週のこと――――――。  二年A組のクラス委員を務めるオレと紅野アザミは、担任教師に呼び出され、放課後の相談室に向かっていた。 「あっ、黒田くんと紅野さん、このあと相談室に来てくれない?」  午後の授業が終わったあと、ショート・ホーム・ルームの時間に、ユリちゃんこと谷崎先生は、そう言って、オレたちを引き止めた。  オレはともかく、放課後は所属する吹奏楽部の練習で忙しい紅野には、授業外のことで、あまり負担を掛けたくないのだが……。 「

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜①

          初恋リベンジャーズ・第四部プロローグ〜人は尊敬なしに誰かを愛することはできない〜

           5月もなかばを過ぎたころ――――――。  ボクは、いまだに、ゴールデンウィーク明けに開催されたオープン・スクールの一件を引きずっているように見える親友に対して、いい加減、ウンザリしはじめていた。 (ひと月半で、二回も女子にフラレたからって、いつまで、ウジウジしてるんだよ……)  そう感じつつも、竜司の一度目の失恋のトラウマを、SNSのストーリー機能で拡散してしまったことについては、ボクも(口には出さないけど)それなりに罪悪感を覚えていたので、なんとか、その心の痛手から

          初恋リベンジャーズ・第四部プロローグ〜人は尊敬なしに誰かを愛することはできない〜

          負けヒロインに花束を!エピローグ〜青と、夏と、負けヒロインに花束を〜

          「私は、人生ドラクエ説じゃなくて、人生ポケモン説を推したいね!」 と、彼女は言った。 「いまの世の中、ヒトの一生は、ひとつのストーリーをなぞって、外れないように進めていく『ドラクエ』のようなモノから、好きなポケモンを集めて育てるようなモノに変わってきた、ってこと。ポケモン的な人生は自由度が高いから、何をゴールに設定するのか……それは、プレーヤーの数だけ答えがあるってこと」  これが、ワカ姉の見解だ。  この人生論が、どこまで的を射ているモノなのか、まだ、16年しか生きて

          負けヒロインに花束を!エピローグ〜青と、夏と、負けヒロインに花束を〜

          負けヒロインに花束を!第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑬

          「な・な・な、なんのことだよ、幼なじみキャラの攻略って……」  そのものズバリな指摘に、いつも以上に言葉に詰まりながら返答すると、名和立夏は余裕たっぷりの表情で、自らの推理(というほどハイレベルなモノでもないが……)を披露する。 「私、男性向けのゲームには、あまり詳しくないんだけど……人気ゲームの『ナマガミ』には、桜田志穂子だっけ? そんな名前の『男子の理想像』って言われてるキャラクターが居るんだよね?」   想定もしていないところから図星を突かれたオレの反応を楽しんで

          負けヒロインに花束を!第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑬

          負けヒロインに花束を!第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑫

           夏休みまで、残すところ10日となった木曜日――――――。  前日のオレとの交渉の成果なのか、上坂部は、久々知に対して、積極的に話しかけているようだ。    そんな彼女の様子をうかがいつつも、昨日までと異なり、放課後にとくに予定がないオレが、帰り支度をしていると、後方の席から声がかけられた。 「ムネリン、ムネリン! 放課後に予定が無いなら、サンサンタウンで、お昼ご飯を食べて帰らない?」  そう言って誘ってくる塚口マコトの声に、「ん〜、そうだな〜」と反応する。  ちなみに

          負けヒロインに花束を!第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑫

          負けヒロインに花束を!第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑪

           屋上フロアに座り込んだクラスメートの様子に焦ったオレは、彼女の体調を確認するべく、すぐにそばに駆け寄る。 「上坂部、大丈夫か!? こんな暑い場所に、呼び出してすまなかった」  片ひざをついて、彼女の顔をのぞき込みながらそう言うと、上坂部葉月は、脱力した表情で、ため息をつきながら、 「もう……立花くんは……そういうところだよ!?」 と、チカラの無い笑顔を見せた。その表情を確認し、 「す、すまん……早く、涼しい場所に……」 移動しよう――――――と声をかけようとした

          負けヒロインに花束を!第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑪