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YS 1.38 寝ているときのあれこれも活用して

心を集中させる練習方法を続々紹介している、ヨーガ・スートラ。今回は、4つめです。
ヨガインストラクターのもえと申します。今週もどうぞよしなに。

※前回分は、こちら『YS 1.37 あの人を対象とすることで』をご覧ください。


ヨーガ・スートラ第1章38節

स्वप्ननिद्राज्ञानालम्बनं वा॥३८॥
svapna-nidrā jñāna-ālambanam vā ॥38॥
スヴァプナ ニドラー ンニャーナ アランバナ ヴァー

あるいは、夢や深い眠りの中で得られる体験に集中することによって。(2)


インテグラル・ヨーガ(パタンジャリのヨーガ・スートラ)(以下、インテグラル・ヨーガ。参照2)は、眠っているときに見る神々しい存在の夢や、自分が非常に高揚した感じを思い出して、それを対象にして集中せよと書いています。もしくは、夢を見ないくらい深く眠っている時の、あの安らかな気持ちも対象になるよと。

経験から思いつくあれやこれ、ありそうでしょうか。


ハリーシャ(参考3)は、「起きているとき、夢を見ているとき、途切れなく存在する自分はあるのか? 存在しないなら、どうして私はよく眠っていたとか分かるのだろうか? 存在するなら、その全部の状態に存在する自身の本質とはなんだろう?」と考えてみることで生まれる洞察についても、このスートラは言及しているんじゃないかといいます。ヨガが睡眠をどう読むかというところを、明らかにするというよりは、感じ入ることで集中の対象にする。またそれ、なかなかですね...。

ちなみに、ヨガが睡眠をどう読むかについては、睡眠は心の作用のひとつだよという スートラ1.10 であれこれ書いているので、そちらもぜひご覧ください。


インテグラル・ヨーガと、フォーチャプターズ オブ フリーダム(以下、フォーチャプターズ。参考1)は、解説者が同じなのに、こうも内容が変わるかねというのが、この解説書読み比べのきっかけですが、今回のスートラも、フォーチャプターズは、伝統的な練習をぐいぐい書いていくスタイルです。そして、意識的に夢見ること(conscious dreaming)と意識的に眠ること(conscious sleeping)の練習を発展させていくことによって、心をコントロールできるようになるよといいます。

意識的に夢をみることなんて途方もないように思いますが、アンタル マウナ(antar mouna、内なる静けさ)と呼ばれる、外に向いている感覚を閉ざして内側に引き込む練習では、練習が進んだ最後の段階では意識的に夢見ることというのは、その5つの段階のうちの最後のステージだということです(参照11)。だから、すでにそれを目指す地図はできているということ。

押し込まれた感情や考えが、アウトプットされないまま残ってしまうことで、心が自由に流れることの邪魔になる。それが無意識の領域での種となり、苦しみを生み出すもの(サンスカーラ)となり、気付かないうちに、大きなものを積み上げてしまう。だから、雑草の葉っぱだけむしってなんとかしようとせず、根っこから引っこ抜いた方がいいように、その無意識の部分に働きかけようという練習の一環のようです。(参照12)

たとえば夢を見ているとき、その夢を〈経験する〉ことはできるけれど、〈コントロールする〉ことはできない。それを、意識的な眠りと夢の中で、夢を見ている状態、寝ている状態にある意識を発展させることができることを目指す。ほ、ほほう。

水を差すようですが、この練習法、フォーチャプターズは、危険だから多くの人ができるものではないし、そもそもサイキックの人向けだよと書いております。なんだい!と思うけど、まあそういうのもあるんだなと知るのはいいのではないかと、書きました(いつか必要になる可能性もある)。意識/無意識に分け入ると思うと、確かに気軽に手を出していいものではなさそうです。


ちなみに、アンタル マウナは、スワミ・サテャナンダ・サラスワティさんが始めたサテャナンダ・ヨガで発展した練習方法だということです。既に八支則を学んだ人用に付け加えると、伝統的な練習であるプラティヤハラにもう一度息を吹き込むべく発展させたものだということ。

そして、このスワミは、もともと伝統的にあったシステムからヨガニードラも発展させた方でもあるらしく、おお、そうつながるのかというところです。

えーと、ちなみにフォーチャプターズを書いているのも、このスワミです。つまり、インテグラル・ヨーガの元となる本を書いているのもこの方です。(この辺りについては、「ヨーガ・スートラを読みたい」を始めます!をご覧ください)

英語版しかないですが、このスワミの書いたヨガニードラの本のリンクを貼っておきます。フォーチャプターズも同じシリーズなんですが、とても良いよとインドですごく勧められました。何冊か買って読んだけど、確かにお勧めできると思います。英語でも問わないぜという方は、ぜひ。


というわけで、どうだったでしょうか、今回のスートラ。いつも以上に内容がとっちらかっているのは、わたしがどうしてもピンときていないせいです。力不足で申し訳ないです。寝るのが好きなのにおかしい... 。ちなみに、インテグラル・ヨーガが書いていますが、睡眠はタマス的つまり不活性のものなので、その安らかさを念想するのであって、眠りそのものをではないということです。長く寝すぎると、起きておもーくだるーくなりますよね。そういうことです。それは、良く知っている!(偉そうに言うことではない)

ハリーシャも、そういう気持ちを汲んでくれているのか、ピンと来ないなと思ったら、次行こ!と言っています。これがしっくり来るという方もいるはずなので、ぜひそれがどんな感じなのか教えてください...。それくらいはてなマークを取り除けなかったのですが、目的地が同じでも道は違っていい、という寛容さは魅力だなあということににこにこしつつ、今回のスートラはここまでです。


さて、今回もスートラをサンスクリット語で読んで終わりにしましょう。毎回読んでいると、知っている単語が増えてきたなと思います。語学好きなので、そうやって覚えていけたらいいよなあなんて思っています。


さて、集中する方法あれこれ、次回が最後です。若干ずっこけそうなのが待っていますので、どうぞお楽しみに。こちらからどうぞ⇩

※ 本記事の参考文献はこちらから



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