マガジンのカバー画像

『百年の孤独』を代わりに読む

6
ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』をゆっくりと読んでいきます。月1回更新予定です。
運営しているクリエイター

2014年8月の記事一覧

第2回 彼らが村を出る理由

第1章はマコンドを開拓した若き族長ホセ・アルカディオ・ブエンディアがジプシーたちの持ち込んだ発明品にはまるあまり、妻や子供をほっぽりだして、文明との接触を目指し引越しを画策するも、やがて落ち着いてマコンドに腰を据えるという話だった。第2章は、彼らがもといた村を去らねばならなかったいきさつ、マコンドに住むものがマコンドを出て行く理由を中心に話が進んでいく。今回はこのメインストリームをたどりながら、その時々に彼らが遭遇するありえない出来事とその応じ方の可笑しさについて見ていきたい

第1回 引越し小説としての『百年の孤独』

ホセ・アルカディオ・ブエンディアの一族が海から遠く離れた内陸の土地にマコンドという村を開拓し、繁栄させ、百年の後に村も一族も滅んでしまう。大雑把に言えば『百年の孤独』はその一族と村の年代記である。しかし、それを知ったところで『百年の孤独』を体験したことにはならない。この文章では、大雑把なあらすじとは対極のこと、細かいところに拘りながら読み進めたいのだ。なにしろ、可笑しなことは細部に宿るのだ。町を繁栄させるのも、滅ぼすのも、国家を転覆しうるものもやはり最初は細部に宿ったはずだか

第0回 明日から「『百年の孤独』を代わりに読む」をはじめます

ガルシア=マルケスの『百年の孤独』をはじめて読んだ時のことが忘れられない。あれは本当に世界がひっくり返るような経験だった。現実には起こりそうもないことがつぎつぎとまるで手品ショーのようにして起こる。それでいて、かつてこんなことが私の家族にも起こったのではないかという親密な感覚が、すっかり忘れていたことを思い出したときように迫ってくる。こんなことが小説でやれるのかと私はひどく驚いたのだ。ただただずっとこれを読んでいたいと思った。と同時に、多くのひとに読んでほしい。『百年の孤独』