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前向きに、マイペースに。変わりゆく思いを受け入れる生き方。【書く人 桃沢もちこ】

ライターとして活動する人の多くは、自身の目指す肩書きやキャリアの方向性について考えることがあるだろう。ライターとしてどうなりたいのか、どう在りたいのか、まだ模索中の人も少なくない。筆者自身もこれからのキャリアや生き方を模索している途中である。

今回お話を伺う桃沢もちこさんは、WEBライターとして取材記事やエンタメ記事・エッセイなどを執筆している。ライターとしての生き方や在り方を模索しながらも、自分の可能性を信じて突き進む毎日。

桃沢さんが抱いている「書くこと」への思いや、これからの目標について取材した。

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プロフィール

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愛知県在住。ブロガーを経て、ライタースクールへ入学。スクールではSEOライティングを学び、2021年1月よりWEBライターとして本格的に活動を開始。現在の活動媒体は日刊SPA!、TOCANA(トカナ)、ぶんしょう社など。「真面目からおふざけからエロまで」エンタメ記事や取材記事・エッセイなどさまざまな文章を執筆している。

ただ思いを文章にするだけではダメなんだ

昔から自分の思いを書くことが好きだった桃沢さん。ライティングスクールへの入会をきっかけに、WEBライターとしての活動が始まった。

「当時、事務員として働いていた私は収入的な不安が大きいことから、副業でブログを始めることにしました。『ブログを書けば稼げる!』と思い込んでいましたが、そんな上手い話はなく……。頭を抱えていた時期に、ライタースクールの関係者から『ブロガーよりもWEBライターの方が稼げますよ』とDMをいただいたんです。そのメッセージを見て、やってみようって気持ちになって……。今考えると、20代も後半に差しかかって手に職をつけないとって焦っていたんだと思います。」

「自分はこのまま、何も持っていないままでいいのだろうか」と焦りを感じていた桃沢さんにとって、ライタースクールとの出会いは大きな転機だった。入会金は38万円。決して安い金額ではないが、自分の可能性を信じて入会を決めた。

WEBライタースクールのシステムは、研修期間に20記事を納品することでその後も仕事を回してもらえる、というもの。入会後はひたすらSEO記事を書き続けたが、書けば書くほど、WEBライターという職業に違和感を持つようになった。

「私にとって、大きな出費をして入会したスクールだったので、当時はSEOについて必死に勉強をしていました。でも、『私はSEOが苦手かもしれない……。』と感じ始めるようになったんです。なんのために記事を書いているのか、このままでいいのか。そんな気持ちが芽生え始めライタースクールを退会することにしました。色々と思いがあったので退会した経緯をnoteに書いたら、日刊SPA!の編集者の方に声をかけていただき、本格的にライターをスタートすることができました。」

根本的な原因は「SEO記事を書くのが苦手だ」ということ。そもそも、「文章を書く仕事=自分の思いを自由に書ける」と勘違いしていたので、ライターの仕事をわかっていなかった。ライターと自己表現は別物。

添削は毎度のこと赤字が入れられた「検索意図が間違っているので全て書き直しです。Google検索で1位の記事を参考にしてください」と指摘されたことが何度かあり、なぜGoogle1位の記事をお手本にするのかも理解できず、それだと同じような記事が量産されるだけでは?と思ったこともあった。
(引用:webライタースクールを退会しました|桃沢もちこ|note

自分の思いを文章にすることは好きだった。しかし、WEBライターはただ自分の思いを書くだけでは務まらない。ライタースクールに入会したことで、「WEBライターの仕事」と「自己表現としての書き物」は全く別物だと気がついた。

取材経験で得た『ルポライター』という目標

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現在は、日刊SPA!、TOCANA(トカナ)、ぶんしょう社などで執筆をしている桃沢さん。ライターとして最も楽しさを感じるのは、取材をしている時間だという。取材をすると、今まで関わることのなかった人たちの人生や思いを知ることができる。自分の視野が広がっていくことをひしひしと感じていた。

「取材をするようになってから自分の知らない世界が広がっていくようで、とても楽しいです。今は割とニッチなジャンルの取材記事を書くことが多いのですが、そのなかでルポライターという職業に興味を持ち始めました。社会的な事件・問題に関連する人たちを取材してみたいんです。」

ルポライターとは現場を取材し、客観的な事実を記事にする職業だ。社会的な事件・事象を取り扱うことが多く、自分の意見や見解は入れ込まずにありのままを発信する。

桃沢さんがルポライターに興味を持った経緯には、取材経験だけでなく過去の生活環境からの影響も受けているという。

「私の周りには、貧困で悩んでいる子や、親からの虐待を受けている子、家庭環境が複雑な子が多くいました。援助交際をしている子だったり、本当は働きたくないけど風俗で働かざるを得なくなった子だったり。
そういう人たちは、あまり明るみに出てくることはありません。『自分とは違う世界に生きている人だ』と分断してしまう人も多いんじゃないでしょうか。でも、世界はとっても狭い。自分が気づいていないだけで、意外と近くに暮らしていたりもします。平凡に生きていると感じている人たちにも、センシティブな問題に触れる機会を持ってほしいと思っているんです。」

所得格差や男女格差、女性の貧困問題など、日本には深刻な問題が根強く残っている。「自分とは違う世界の人間だ」と片付けられてしまう人たちがいることは確かだ。今までの生活や取材で関わった人たちが、桃沢さんの目指すルポライターという目標に大きな影響を与えている。

変えられるのなら変えたい

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画像提供:桃沢もちこさん

現在、愛知県に住んでいる桃沢さんだが、今後はライターとしての関わりを持つために上京を検討しているという。

ここ数ヶ月毎日のように同じ思考が行ったり来たりしている。「生活環境をガラッと変えてしまいたい。ここじゃないどこかへ行きたい」この思考は甘えなのか、希望なのか、野心なのか、逃げなのか自分でもよくわからない。そこには複雑な感情がいくつも混在していて、絡まった手芸糸のようにぐちゃぐちゃになっている。
(引用:上京への一歩|桃沢もちこ|note

上京への思いが強くなったきっかけは、週刊誌記者の採用面接に落ちたことだった。不採用の理由は「都内近郊に住んでいないため」。桃沢さんは、都内近郊に住んでいれば採用されたのだろうか、と落ち込んだという。

ライターの仕事はどこにいてもできる場合が多い。しかし、都内近郊で取材をする記者となると地方からの採用は難しい。

「私は高校も中退していたり仕事を転々としていたり、履歴書だけで『桃沢もちこ』という人間を見ると、どうしても印象が悪くなってしまいます。なので週刊誌記者の書類選考が通っただけでも奇跡だと思うくらい嬉しくて。居住地が理由で不採用になったのが悔しかったことが、上京という選択肢を見つけたきっかけです。ライターが仕事の幅を広げるには横の繋がりも大切なので、東京の方が自分の可能性を広げていけるんじゃないかって思っています。」

地元の愛知県を出て、東京でライターとしての可能性を広げたい。とても大きな決断をしたものの、結婚をしている身では自由に動けないことも多いのが現状だ。

「この年齢になると周囲も結婚をして、子供を産んでいることが多くて。子供ができると思うように動けないのは、周りを見ていると十分に理解できます。いま私は、夫と二人の生活を送っていますが、子供がいないからこそ、まだまだできることがあるんじゃないかって思うんです。結婚をしているから、夫がいるからって、何かを諦める必要はない。この環境を変えられるなら、変えてみたいんです。」

初めは上京に反対していた夫も、徐々に協力的な姿勢を見せてくれている。既に東京や横浜へ内見に足を運び、上京の計画を練っているという桃沢さん。諦めなければ何かが変わると信じているからこそ、前向きに行動することができるのだ。

大人になるってことはなにかを犠牲にすることではない。選択肢が増えること。可能性を広げられること。今までと違う景色を見ることだってできる。パートナーがいればそれも2倍。子供がいれば3倍、4倍。そんな人生にしたい。
(引用:結婚しても|桃沢もちこ|note

目標は変わったっていい

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画像提供:桃沢もちこさん

エッセイで稼いでいきたいと考えていた時期もあったという桃沢さん。目標の変化について、自身のnoteでエッセイを綴っている。

半年前までのわたしは、「エッセイを書く仕事をしたい」と意気込んでいた。むしろそれを、夢と掲げていたくらい。しかし、実際ライターとしてお仕事をもらえるようになってからはどうだろう。別に「エッセイがメインじゃなくてもいいな」という気持ちになっていた。
(引用:エッセイの仕事をしたい|桃沢もちこ|note

現在はルポライターを目指しているものの、その目標もすぐに変わってしまうかもしれないという。

「今はルポライターになりたいというのが目標ですが、もしかしたら変わってしまうかも。色々なお仕事を経験して、色々なものを吸収すると、良い意味で自分の気持ちが移り変わっていくんです。今はフリーランスとして活動していますが、この先もライター1本で生きていきたい訳でもなくて……。フリーランスに疲れたら働きに出るのも良いかなって思ったり、モデルのお仕事をしてみたいと思ったり。色々な可能性や選択肢を考えられるのもフリーランスの特権です。」

フリーランスには選択肢がたくさんあるからこそ、さまざまな挑戦をすることができる。大人になっても、結婚をしても、何かを犠牲にする必要はない。桃沢さんは、今後も前向きに、マイペースにライターとしての道を歩んでいきたいと考えているそうだ。

「私は文章を書くことが好きです。記事を書いていると、良い意見だけはなく批判的な意見を受けることもあります。もちろん悲しい気持ちになることもありますが、世の中にはいろんな人がいるんだな、こういう意見もあるんだなって視野が広がるいい機会だとも思っています。これからもライターのお仕事にやりがいを持ちつつ、マイペースに自分の人生を考えていきたいです。」

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筆者は桃沢さんの書くエッセイに幾度となく助けられた。着飾ることなく、ありのままの自分を綴った言葉たちは、とても温かく、重みがある。

桃沢さんは、今後どんな人に出会って、どんな思いを抱き、どんな人生を歩むのか。同業者として、エッセイスト「桃沢もちこ」のファンとして、これからも彼女の文章に触れていきたいと心から願っている。

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