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Twitterで人生を変えた。ストーリーテラーとしての新たな物語。【ストーリーテラー あっきゃん】

相手に伝えたい物事を物語として語る「ストーリーテリング」は、マーケティング手法の1つとして注目されている。アメリカでは”ストーリーテラー”という役職ができるほど重要な要素だ。

今回お話を伺うあっきゃんさんは、管理職として勤めていた会社を退職し、2021年7月よりストーリーテラーとして独立。現在はストーリーテリングを用いた事業「AZ(アズ)」を運営している。

なぜ、あっきゃんさんは会社を辞め、ストーリーテラーとしての人生を歩み始めたのだろうか。どのような気持ち、目標を抱えているのだろうか。

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プロフィール

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1996年生まれ香川県出身。幼少期から様々な人生経験をし、16歳からブライダル業界で6年勤務。その後広告代理店の営業マンを経て、ベンチャー企業の管理職として勤務。2020年12月にTwitterを開設し、140字の短文羅列で情景描写する「あっきゃん構文」という手法でのツイートを独自展開。開設半年経たずして、フォロワー3万人突破。5月にはサンクチュアリ出版社にて初の講演会開催。会社員を卒業し、今年7月に独立。ストーリーテリング事業『AZ(アズ)』を開始する。

“思い”を発信する練習がしたかった

"ストーリーテラー・あっきゃん”としての原点は、会社員のころに始めたTwitterにある。

16歳から22歳までの6年間、ブライダル業界で働いていたあっきゃんさん。ブライダル業界を離れた後は、広告代理店の営業、ベンチャー企業の管理職と、着々とキャリアを積み上げていた。そうしたなか、Twitterを始めるきっかけとなったのは、ある人からの何気ない言葉だった。

「ブライダル業界にいた時からお世話になっていた社長が、noteでブライダルの重要性などについて発信していました。コロナ禍で結婚式を挙げる機会が減り、ブライダル業界も大きな打撃を受けています。そんな環境のなか、個人の発信はとても影響力があると教わったんです。『あっきゃんも何か発信してみなよ』ってアドバイスをもらったんですが、国語に苦手意識があった私にとって、noteでの発信はめちゃくちゃハードルが高くて……。」

しかし、何も行動を起こさないのは勿体ない。noteで発信をする前に、Twitterで文章の練習をしようと考えた。

ツイートとして書くことができるのは140字。自分の伝えたいことをギュッと要約した文章を作るには最適なツールだ。まずは行動をしようと2020年12月にTwitterを開設し、”あっきゃん”としての物語が始まった。

自分にとって分かりやすい文章=あっきゃん構文

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学生時代から国語はいつも平均点以下だったあっきゃんさん。国語ができないために志望校のレベルを落とした経験もある。

Twitterで発信を始めてからも、文章への苦手意識は消えなかった。

「いまだに難しい文章は苦手です。Twitterの140字でも難しい内容の文章に出会うと最後まで読まずに流してしまいます。だから、自分がツイートを作るときは、とにかく分かりやすく書くことを意識しています。誰が読んでも頭の中に情景が浮かぶような、そんな文章にしているんです。」

自分にとって分かりやすい文章を追求した結果、誰が読んでも分かりやすい文章が生まれた。あっきゃん流ツイートで日常の出来事を積極的に発信していると、次第に人との繋がりも増えていった。

「以前から仲良くしているフォロワーさんが、『あっきゃんのツイートって情景を短文で羅列していて特徴的だよね。あっきゃん構文じゃん!』と名付けてくださったんです。それがとても嬉しくて……。確かに自分みたいな方法でツイートしている人ってあまり見ないし、ここは伸ばしていくべきポイントだなって思いました。」

「あっきゃん構文」での発信を続けることで、あっきゃんとしての認知はどんどん広がっていった。Twitter開設から半年経たずしてフォロワーは3万人を突破。2021年5月にはサンクチュアリ出版主催の講演会に登壇し、Twitter開設に至った経緯やあっきゃん構文の秘訣について話す機会を持つことになった。

「今まで大勢の前でお話をする機会なんてほとんどなかったので、正直ずっと緊張していました。だけど、Twitterを始めていなかったら出会うことなかった人との関わりを持つことができて本当に嬉しかったです。これも、いつも応援してくださるファンの方のお陰です。」

今までの経験がクリエイティビティへ

会社員として忙しい日々を送るなかでも、ツイートに対する姿勢を崩すことはなかった。

フォロワーをはじめ、多くの人から「国語の成績が2だったとは思えません。文章が得意ではないのに、なぜ素晴らしい文章が作れるのですか?」と質問を受けることも増えたそうだ。

「私の文章力はウェディング業界での経験が役に立っていると思います。私が従事していたのは、2時間半の披露宴で、ウェディングプランナーが企画した内容を施行するサービススタッフでした。披露宴が円滑に進むように、細やかな気配りが大切になる仕事です。さまざまなイレギュラーがあるなかで、常にお客様第一の業務を行っていた経験が、あっきゃん構文にも生かされているのかもしれません。」

あっきゃん構文は高いスキルによって誕生したものではない。ウェディング業界で培われたホスピタリティが、文章のクリエイティビティへ影響を与えている。「相手が読みやすいように」「相手が情景を思い浮かべやすいように」そんな細やかな配慮が、140字のツイートに込められているのだ。

ストーリーテリングをもっと学びたい〜AZの始動〜

あっきゃん構文を用いてさまざまな思いを発信していたさなか、ある転機が訪れた。

「海外で学問的にストーリーテリングを学んできた方から声をかけていただきました。その方が『あっきゃんのしていることってストーリーテリングなんだよ』って教えてくださったんです。ストーリーテリングを日本でも広めていきたいという思いに強く共感し、新たな事業を始めることになりました。」

ストーリーテリングという言葉は、2010年前後に世界で広がりを見せ始めた。日本でもストーリーテリングの重要性は注目され始めているものの、いまだに本質が理解されていないことも多い。

それまではストーリーテリングという言葉すら知らなかったあっきゃんさん。事業を始めるにあたって、ストーリーテリングの本質について学び始めた。「今まであっきゃん構文として展開していたストーリーテリングを、きちんと勉強をした上で広めていきたい。」そんな気持ちから生まれたのが「AZ(アズ)」という事業だ。

AZはストーリーテリングをルーツとするブランドで、物語を通して行うプロモーション企画・販促活動やSNS運用サポートなどを展開している。

「AZという事業を始めるにあたって、ストーリーテリングを学びたいという声をいただくことが増えました。今はまだ企画の段階ではありますが、いずれストーリーテリングを学びたい方へ向けて、ストーリーテリング技術を伝えていきたいと思っています。」

始まりの「A」と終わりの「Z」を紡ぐ「AZ(アズ)」。
単語や文章は一部分を切り取ったもの。始まりから終わりまでの一連を紡いだものがストーリー。言葉でもなく、文章でもなく、ストーリーの価値を伝えていきたい想いがアズには込められています。

ただ日常の出来事を物語調に書けばいいわけじゃない

ストーリーテラーとしての活動で、ストーリーテリングという手法がフォロワーや周囲に認知され始めた。まだ社会に浸透していないストーリーテリングが広まりつつあるのは、とても喜ばしいことだ。しかし、ストーリーテリングを「ただ物語として伝えるもの」だと、誤った解釈をする人も少なくない。

「ストーリーテリングってただ物語調に書けばいいわけじゃないんです。あっきゃん構文のように日常を羅列すればいいわけでもありません。物語を通して読んだ相手の心を揺り動かす、それがストーリーテリングの魅力です。」

残念なことに、日本ではストーリーテリングの本質を見誤っている人が多い。読み手の心を動かし、惹きつける、これこそがストーリーテリングの持つ効果だ。

あっきゃんさんは1つのツイートを作り上げるまでに3〜4時間を費やすという。生活を送るなかで記憶に残った体験は必ずメモをする。そこから伝えたい物語をノートに書き込み、何度も添削を重ねるのだ。

「ただあった出来事を伝えるだけでは『……で?』ってなってしまいますよね。それはストーリーテリングとは言えないんです。Twitterのスクロールを止めてまで読みたい文章にするにはどうすればいいのか、相手の心を揺り動かすにはどうすればいいのか。とにかく納得できる文章になるまで、何度も見返します。時間をかけて作ったツイートでも、やっぱり投稿しない……なんてこともあるんです。」

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〜日頃から使っているツイート用ノート〜
画像提供:あっきゃんさん

あっきゃんさんの発信する140字には並々ならぬ努力が費やされている。この努力の果てに、たった140字で「人の心を揺り動かす文章」が完成するのだ。

「Twitterは私に大きな変化を与えてくれました。ただの平凡な会社員だった私が、会社を辞めて事業をすることになるなんて……。昔の私からは想像もできません。今は、SNSのコミュニティが1つの社会になりつつありますよね。顔を見ることはできなくても、そこには確かに人との繋がりがあります。多くの方に身近なSNSを使って、自分の思いを発信してほしいと思っています。」

今後は事業AZに専念しながらも、ストーリーテリングを正しく広めていきたい、1人でも多くの人に物語の素晴らしさを伝えたいという。Twitterでの発信も可能な範囲で続けていきたいと考えているそうだ。

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Twitterと出会ったことで、人生が変わったと話すあっきゃんさん。
とても明るく丁寧に言葉を発する彼女の人柄に心を惹かれる1時間だった。
お話を伺うなかで、同年代の女性として、同じ物書きとして、物語の影響力に可能性を感じた。

物語は誰にだって存在する。どう発信するかは自分次第だ。今回の取材で、自分の物語について考えるきっかけをもらった。

飛んで喜びます…!そしてお寿司を食べます🍣