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折り紙によるライオン

INTRODUCTION

ライオンというテーマに着手しようと考え始めたのは、「折り紙による、鹿」を折っていた時でした。鹿の毛の表現方法を研究する中で、紙の重なりによって毛の表現ができることに面白さを感じ、別の動物にも応用してみたいと考えました。そこで、特徴的な体毛を持つ動物として真っ先に思い浮かんだライオン(性格にはオスのライオン)を次の題材としました。

Wikipediaより引用

オスのライオンには、言わずもがな首の周りにネックウォーマーのような毛束があります。自分の体を大きく見せるためのものだと考えられているたてがみは、装飾品として利用されたり、彫刻や絵画として表現されたりしてきました。言ってしまえば「ただの毛」にすぎないものに意味を見出し、憧れ続けてきた人間の欲望についての関心もあり、ライオンという題材には惹かれていきました。

Wikipediaより引用

CONCEPT

今回の作品には2つのコンセプトがあります。1つは、動いている状態を固定された形で表現すること。もう1つは感情を表現することです。

動いている状態を固定された形で表現する

絵画や彫刻もそうですが、折り紙も一瞬の状態を切り取って表す表現方法です。表現の質を高める上では、その一瞬にどれだけの密度の情報を構造的に圧縮できるかがポイントになります。そこでこの作品では、ただ静止した状態でなく、動く前・動いた後の状態も想起させるような動いている状態を表現することを1つのコンセプトとしました。

感情を表現する

^_^  (>人<;)   ( ᐛ ) …
人は線だけで構成される記号にも、何かしらの感情を読み解くことが出来ます。なき崩れる銅像、歓喜する群衆の絵など、表現された感情には時に圧倒されることもあります。

ライオン、という動物は「怒り」という感情と結びつけられることが多いと思います。それは冷酷にライバルのオスを攻撃すること、ガゼルを狩る姿に怒りに似たものを感じるからなのでしょう。ライオンの本心は誰にも分かりませんが、無意識にでも怒りの感情を読み解いてしまう人間の認知はとても興味深いと思います。怒っている、と感じたライオンの写真が実はあくびをしているだけだったとしても。

DESIGN

ライオンについてのリサーチ

ライオンを折るにあたっては、まずライオンを理解しなくては始まりません。ライオンの生態や姿形について、Wikipediaや図鑑で調べたり、動物園で実物を見たりします。不思議なもので、ただ画像や動画を見ているだけだとライオンを立体的にイメージ出来ないのです。可愛いライオンのマスコットやライオンの絵が邪魔をして、ライオンという生き物そのものの形が理解できない感覚はとても面白いものでした。  

人はものを効率的に理解して利用するために、記号を用います。もの自体を理解するのは、写真のRAWデータを保存しておくようなもので情報量が多すぎて脳に収まらないのでしょう。特にライオンの顔については、正面からのイメージをデフォルメしたものを思い浮かべることが多いように思われます。馴染みのある動物だからこそ効果的に記号化され、それゆえに生のライオンを思い出しにくくなるというのは何とも皮肉で笑えてしまいます。

スケッチ  

ライオンのスケッチ

 ライオンの形を手で覚えるためにスケッチをします。最初はリアルに、徐々に低ポリゴンのカクカクした形で描いていくことで、折り紙として気持ちいい表現を探っていきます。

基礎構造・顔部分の試作

試作の数々

立体的な折り紙を造形するプロセスは、木彫りや3DCGモデリングなどのプロセスによく似ています。まず、題材の大まかな形を表現する基礎構造を試作し、その上にレイヤーのように目や鼻などのパーツを載せていきます。基礎構造としては、顎の部分を紙の張力で自然に曲面になるようにした部分が最もエキサイティングな構造になりました。

全体試作

全体試作の途中。作りかけ部分がちょんまげに見える

目や鼻、牙などパーツごとの試作が大まかに出来たあとは、各パーツの整合性とバランスを見るために、パーツを組み合わせる全体試作を行います。各パーツの接続を行ってみて、たてがみの表現が出来るように紙の領域を付け加える形で各パーツの紙の配分を調整します。最終的には紙の1辺を24等分にしたグリッドをベースにすることにしています。

最終試作・本折り

全体の構成が決まれば、後はバランスを見ながら各パーツの作り込みを行なっていきます。私は色々試しながら、時に適当に折りながら造形をしていきたいため、同じ構造の試作品を2つ以上作ります。試しながら折って良さそうな折り方を片方に残しながら、別の紙で他のパーツとの繋がりがうまくいくか試す、など色々と都合がいいのです。基礎構造だけ分かってしまえば、いくらでも複製が出来る折り紙の長所です。

COMPLETE SHAPE

色々あって3ヶ月くらいかけ、完成させました。作品単体だと物足りなかったので、台座としての額縁も合わせて作っています。

正面
よこ
ななめ

THANK YOU!

ここまでお読みいただいてありがとうございました。以前書いたブログ記事を大幅に書き直してNoteに改めてアップしてみました。1年前でも昔書いた文章というのは、どことなく気恥ずかしいものです…笑

本当は折り方も解説したいのですが、複雑系になると前提とする技法が多くなかなかお伝えするのが難しいのです。技法も含めて地道に公開していくのが回り道のようで近道だと思うので、コツコツ投稿していきたい所存です。
他にも記事をあげていくのでお付き合いいただけると、とってもありがたいです。

20230409
Tomoaki Hamanaka

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