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#1日3アルバム開拓 2023/7/23


46.Live For The Highest Bidder - Nick Cambell Destroys/Jacob Mann/Christian Euman

 皆大好きJacob Mannも参加する、Nick Campbell Destroysというベーシストのアルバム。VulfpeckやScary Pocketsなどとも共演しているよう。
 軽快なハーフタイムシャッフルの『For Your Consideration』から始まる本アルバムは、ミニマルで程よく締まったビートや音像ではあるものの、あまりタイトになり過ぎず、スタジオの暖かな雰囲気をそのままパックしたような自然な演奏が心地よい。
 注目すべきは、Nick Cambell Destroysのベースではあるが、やはりJacob Mannの操るJUNO-106の音色が、驚くほど表情豊か。さながらピアノのように操るJacob Mannの演奏によって、ほぼピアノトリオを聴いているような錯覚に陥る。俗にミニマルファンクと言われるムーブメントの流れを大いに汲んでいる印象があるが、比較的オーソドックスなところに着地している印象もあって非常に聴きやすく、期待通りなアルバム。
 『Modern Jazz Is A Bloodsport』ではさらっとしているものの、安定感のあるNick Cambell DestroysのベースとChristian Eumanの熱量のあるビートと即興性にあふれるJacob Mannの演奏がマッチ。やっぱりこういうのが一番好きです。

47.UNTIL THE CLOUDS APPEAR - Barrier Reef

 先日も取り上げた仙台を拠点に活動する、Barrier Reefの最新作。よりメロディアスに洗練されたアンサンブル。圧倒的に前作よりもポップでますます聴きたくなるバンドになった印象。『Behind the scenes』とかはもはや口ずさめるほど。特に、クリーントーンが甘く印象的になったことで、いつまでも聴いていたくなる。『Strobo』では特に、そうしたクリーントーンの甘味と疾走感あるドラムのマッチングが堪能できる。
 あんまりソロパートを作らず、統一感のあるリフの展開で進んでいくことで、ある種ダンスミュージックとしての強度が増している。その一方で『Solaris』では後半にしっかりブレイクを設けた後に、ガラッとトーンを変えることでかなりエモーションな仕上がりになっている。全体の曲のバラエティも増したことで、あっという間に聴ききってしまった。ぜひともライブハウスで聴いてみたいところ。

48.1STST - TESTSET

 高橋幸宏氏や小山田圭吾氏もメンバーであったことで知られるMETAFIVEから派生して結成されたTESTSET。METAFIVEの持つ緊迫感や緊張感をより凝縮したかのような予測不能なサンプルの応酬とスリリングなサウンド。およびバンドサウンドの融合が図られた、TESTSET。とにかく全体のサウンドがドライでクリア。透き通っているからこそ、これだけの音が鳴っていても破綻なく耳に届く。もはやクリア過ぎて不安になるくらい。ぞわぞわする。
 LEO今井氏のボーカルとラップの、幻想的でありながらも力強い表情の豊かさも堪能できる。コーラスをかけるとふくよかなコルネットやトランペット的なニュアンスに聴こえたりするので、本当に不思議。攻撃性のある声色からつやのあるレザーのようなしなやかな声色まで一瞬で変化する。
 アルバム通してどんどんリズムに飲まれて行ってトランスしていく感覚がある。レトロフューチャー的なサウンドも相まって、どんどん音に酔わされていくのが心地よい。ハイになる。
 『Bumrush』のような高揚感と不安感が混じったサウンドを聴いて、当たり前だけど、METAFIVEの血脈を強く感じた。わざわざこんなことを言うのは、もう聴けないんじゃないかと心のどこかで思っていたからで、ちゃんと受け継がれたことに感謝している。

49.822 - 森山直太朗

 森山直太朗、十枚目のアルバム。ちょうどコロナ禍にスッキリで弾き語りをされてたのをみてから、急に意識するようになった。そのあと年を取る度
、その良さがわかるようになった。やはり、日常に対する描写の書き込み方がリアルで心に深くしみこむ。こうした場合で、あまりに具体的なワードを入れると浮きがちだが、『群青』の「Hey Siri」という単語が決してイロモノになっていない。非常に身近な孤独を描く上でこれほどまでに効果的なものはない。
 サウンドもフォークを軸としつつも、彩豊か。その一方で、展開される歌詞はいつも以上にもったりとした闇や痛みが含まれている。「どうにもならない事ばかりだが、生きるしかない」という痛みの描写がある意味一番なまなましい。しかし、そうやって描いてくれるからこそ、取り除かれていく心に入ったままの棘があるのも事実。そして、そうしたことを歌う人だからこそ応援も本物だと信じていい気がする。
 なんだか、歌詞についての感想を書き始めると、自分の話をせざるを得なくなってしまいそうなのでここで打ち止め。ただ一つ言えるのは、変な言い方だが、森山直太朗氏の歌詞は「自分に出会わせてくれる」ということ。とりあえず感想を書くことを目的にせず、向き合ってみます。



 


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