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#1日3アルバム開拓 2023/8/9


66.The World Is Getting Smaller - Snarky Puppy

 Snarky Puppy。今では、現代最強のインストゥルメンタル軍団として確固たる地位を築いている彼らの初期の作品をセレクト。
 昨年リリースされた『Empire Central』はそのサウンドの厚みやゴージャスさに圧倒されるアルバムで、間違いなく最高傑作なのだが、本作はそこから比較すると明らかにこじんまりとしている。しかし、それと比較して本作が魅力的ではないというわけでは全くない。近年のSnarky Puppyは人数が膨大になり、もはやオーケストラのようであるが、本作はまだまだバンド然としたスケール感であり、そこが却って非常に新鮮であった。その結果、各プレイヤーが何をしているのかということも、よりくっきり見えやすい。アンサンブルで魅せるというより、個々の技の積み重ねの魅力がある。
 それこそ名盤『We Like It Here』のようなライブ感のあるサウンドとは方向性は全く違うのだが、ライブレコーディングではなくオーソドックスにスタジオで仕上げられた結果としてシンプルさが際立ち、素直な良さが際立つ。その一方で、展開されるソロや、演奏から感じとれるプレイヤー同士のコミュニケーションの方向性は間違いなくSnarky Puppy。これはこれでとても好み。一ファンとしては、こういう規模の編成のSnarky Puppyを改めて今見てみたい。

67.The New Heritage - Telemakus

 Telemakus。ブレイクビーツや俗にnu-jazzと呼ばれるようなジャンルの作品を発表しているピアニスト。ジャズファンク的な要素もある。
 この企画でいつも言ってることだが、どれだけ最終的に音作りがなされ、編集がされるにしても、演奏の手触りは必要だと考える私にとって、非常に『You Ready』を始めとして、全体的に絶妙なラインで心地よい。『Mars Blues』や『Third Sun』ではさっき列記したジャンルに加えて、フュージョン的な要素も多く含まれる。そう筆者と年齢がほとんど変わらないような年代のアーティストでもフュージョンを盛り込んでいるという状況は非常にうれしく意外でもある。
 間違いなく20年代最新のアルバムとしての音像ではあるが、どこか懐かしさも感じる。意外とトラディショナルなジャズに近しい瞬間もあり、ここまで広い年代、そして様々なジャンルをまとめ上げる手腕は見事。『The New Heritage』というタイトルはまさにその通り。

68.expérgo - NMIXX

 NMIXX。結構大胆なサンプリングが行われることは知っていたが、『Young, Dumb, Stupid』で『Frére Jacques』が用いられてて驚き。しかし、別にそこが曲の肝とかではなくほかの構成要素と同じように並ぶ要素の一つとしてまとめ上げられている。ネタ枠でもなんでもないし、必然的であってそこに何も違和感はない。そもそも民謡みたいな歌い継がれているメロディーラインって、それだけ長い年月残っているという時点で色あせないし、優秀なんだということに改めて気づく。そして、一種のポップさのようなものも付与されてて素敵。
 意外とユニークさというかやっば!!!というところはなくて非常に素直に感じる『PAXXWORD』(もちろん、ヤバさをマスキングされてるだけの可能性もある)とかを聴いていると「ああ、これがええポップスなんか」と何か腑に落ちる。『Just Did It』とか『My Gosh』とか気持ちいい。
 K-POPという雑認識の人間故、今まで「ミックスがパキパキしてる」みたいな言い方をすることが多かったが、それよりも「やりたいことが明確で整理されて伝わってくる」とかの方が近い。柔らかい印象を受ける曲でも「やわらかい」ということがクリア。



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