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#1日3アルバム開拓 2023/7/31


54.A Muddy, What Else? - .multibeat/Noflik

 .multibeatというバンド。今作は、Noflikとはオランダのビートメイカーとの共作。以前もこの座組みのアルバムはあった模様。
 全体的にいわゆるLo-fiヒップホップ的な文脈の曲が多い。生ビートテープというような手触りであり、逆にいうといわゆる「演奏」らしい派手さのようなものはあえて控えめ。演奏は徹底してミニマルでレイドバックのノリが終始漂う。
 作りこまれた音質によって生まれる美しさや、心地よさこそあるものの、なかなか演奏としてはとらえどころがない。そこが個人的には好みが分かれるところであった。心地よいが、どんどん耳から流れて行ってしまうような感覚があった。

55.PARAGRAPH - ASPARAGUS

 日本の3ピースロックバンド、ASPARAGUS。全体として非常に王道かつ素直なサウンド。何か劇的なギミックがあるわけでないが、却ってそれが新鮮に聴こえる。透明感のあるボーカルと、耳なじみの良いメロディーラインだからこそ、個々の演奏も自然に見えてくる。終始英語で歌われているが、それも歌詞というよりだんだんと響きやリズムに分解されていって、演奏と渾然一体となっていく。
 シンプルだからこそアルバムを通して聴いた際に、右肩上がりに心地よさが蓄積していく。次々と手が伸びるという感じ。
 のほほんと聴いていたけども、アルバムを通し終わったときに、アンサンブルが恐ろしく緻密だったことに気がついた。派手ではないけどテクニカル。堅あげポテト的なバンド。初速から気持ちいいけど、じわっと後から来る良さもある。

56.The Only Way - Kaidi Tatham

 Kaidi Tatham。ロンドンのクロスオーバー界の重鎮。パワフルなグルーヴで全体を進めるドラム、ファンキーなベース。そしてその上に乗るシルキーなストリングスとブラス。それをまとめ上げるEP。音質としてはどちらかというとHi-fiな印象があるが、落ち着いたトーン。いつまでも聴いていたくなるような心地よさ。
 しかし、そうした音質に目が行っている瞬間に、ふと起きる展開にグッと心が掴まれる。特に、『Feel Like I‘mOn My Own』の中盤以降の展開では思わず声が出てしまうほど。ただ、そうした仕掛けがあり、展開にもギミックがあるのに、アルバム全体のムードは一貫している。先ほど挙げた『Feel Like I‘mOn My Own』の展開はテンポもビートも変わるかなり大掛かりなものなのに、全くムードが切れず、心地よさと高揚感は増すばかり。
 そもそもビートが複雑になりがちなこのジャンルで、そうした一曲一曲の複雑さの快楽だけに頼るのではなく、アルバム一枚通した後の心地よさへの視点がしっかり持たれていることに脱帽するばかり。木も森も考えられている。すごくいいアルバム。

57.Acid Angel from Asia <ACCESS> - tripleS

 韓国のガールズグループ、tripleS。どうやらメンバーが24人も居るらしく、この手のグループにしてはかなり大所帯な模様。Acid Angel from Asiaはその中のユニットらしい…おじさんには難しい。
 楽曲に関しては、冒頭の『Generation』からなかなかファンク的な要素も感じられるトラックで好印象。Cory Wongとか普段聴いている人だったので、なんかそこに刺さった。
 いわゆるK-POP全体に対して結構食わず嫌い的なところがあり、だいぶ身構えて再生したけど思いのほか普遍的。それこそ、Newjeansとかを多少聴いた程度の経験値であるけど、そこで受けたミニマルな印象とはまた違った全体的にキラキラとしたサウンドが印象的。
 あまりにキラキラした楽曲のせいで途中でアパレルショップに居るかのような錯覚に陥り、若干集中力が途切れた瞬間もあったが、リッチなサウンドがよかった。ただ、この手のグループはまだまだ経験値も知識も少なすぎるので、感想も迷う。


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