見出し画像

#1日3アルバム開拓 2023/8/6


62.Camera Obscura - People In The Box

 People In The Box。ポストロックバンド。文学的な歌詞とだまし絵のようなサウンドで見せる表情が目まぐるしく変わる。しかし、それはこちらがただ翻弄されるようなものではなく、むしろ非常に心地よい。変拍子を多用していて、演奏にもかなり情報量が詰まっているのに、歌詞に集中できる余裕がある。
 文学的な歌詞、と一言で言われがちな要素をもうすこし噛み砕くと、おそらく簡潔であるということだろう。言葉を詰めすぎないからこそメロディーが細かくならない。サウンドや構造面での複雑さとのバランスを取る上でこうした歌詞になっているのは、必然かもしれない。
 サウンドとしても、アコースティックともそうでもないとも言いにくい。楽曲の構造としても、歌詞としても複雑なのにも関わらず、全くおいてけぼりを食らわず、全ての要素がクリアに伝わってくる。個性的であることは間違いないが、非常に普遍的で親しみやすささえ感じる。『カセットテープ』まで聴き終わった後の清涼感。

63.Westbound Situation - Pilot 

 Westbound Situation。彼らは自らの音楽を”chambergrass”と呼称している。”grass”という単語から想像されるように、編成や基本となるのはブルーグラス。しかし、伝統的なブルーグラスとは違った展開の多さとジャズ等から取り入れられたエッセンスが取り入れられることで、いわゆる「プログレッシブブルーグラス」とはまた異なったコンテンポラリーな進化を遂げている。以前本noteで取り上げたこともあるYo-Yo- maなどが参加した『Atta boy』にも通ずる、ビートスイッチなども盛り込んだ展開は、心地よくリスナーを振り回してくれる。
 編成としては、Violin、cello、doublebass(Contrabass)、Mandolinを基本としつつ、MandolinはBanjoに変わったりしつつ楽曲によって微妙に編成は変わるよう。路上のパフォーマンスというより、大きなホールにフィットさせたようなブルーグラス。
 全くジャンルは違えど、何か根底の哲学のようなものには蓮沼執太フィルとかに近いものを感じる。他ジャンルからの還元そのものをギミックとして見せるのではなく、完全になじませた上で出している。アレンジに関してもアッと驚くものばかりで『Kogi』のカバーは特に秀逸。

64.I feel - (G)I-DLE

 (G)I-DLE。韓国拠点の五人組のグループ。韓国だけではなく、タイ、中国、台湾からのメンバーもいるとのこと。それが起因しているのかはわからないが、いい意味で多様なアクセントの英語が混じっていて単純に楽器が沢山あるようなおいしさがある。多少この手のグループを聴くようになった中では一番馴染みやすく、聴いていて気持ちいい。『Allergy』を始めとして、あんまりクラブミュージックに傾倒しすぎていないことで「演奏」が見えるところが好き。変な言い方だが、スタイリッシュすぎて息が詰まることもなく「普通にカッコいい」。これは好きかも。『All Night』のボーカル処理がややダーティーで好き。『Peter Pan』で一緒に叫びたいわ。

65.The Fearless Flyers - The Fearless FlyersⅡ 

  The Fearless Flyers。Vulfpeckのメンバーで知られるCory Wongがギター、Joe Dartがベース、Nate Smithがドラム、そしてSnarky Puppyで知られるMark Lettieriがバリトンギターという特殊なギターを操る本バンド。総じて、Vulfpeckのミニマルファンクの流れを汲んでいるが、棹物に特化したことでよりソリッドなサウンドになっている。
 Nate Smithの超絶ドラムも炸裂。やはりVulfpeckのサイドプロジェクトという成り立ちもあり、そしてCory Wongと密接にかかわっているということでCory Wongの往年の名曲『Simon』のリアレンジ版『Simon F15』やVulfpeckの『Daddy, He Got a Tesla』のリアレンジ版『Daddy, He Got a Cessna』も収録されている。『Daddy, He Got a Cessna』のフィーチャリングにChris Thile(プログレッシブブルーグラスのマンドリン奏者)がいたり、サウンド面で一筋縄で行かない感じがやっぱり大好き。『Swanpars』はまさにロックンロールとブルーグラスのハイブリッドのようで唯一無二。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?